クリップ

クリップとは

クリップは、物を挟んで固定するための器具です。文房具として紙を束ねるものから、電子部品の接続、食品の保存、さらには装飾品としても使われるなど、その用途は多岐にわたります。クリップの基本的な機能は、物を一定の状態に保つことですが、その形状や素材、構造によって様々な役割を果たします。

クリップの歴史

最も一般的な細長い楕円形のクリップ、いわゆるゼムクリップの正確な発明者は不明です。しかし、1890年頃にイギリスのゼム・マニュファクチュアリング・カンパニーが発明したという説が有力です。1899年には、アメリカのウィリアム・ミドルブルックがこの形状のクリップを製造する機械の特許を取得しました。現在でもゼムクリップは広く使われており、スウェーデン語では全ての文房具のクリップを「ゼム」と呼びます。

東ローマ帝国では、真鍮製のクリップが使用されていましたが、手作業で一つずつ作られていたため非常に高価で、皇帝や一部の貴族しか使用していませんでした。

ノルウェー人のヨハン・バーラーも1899年と1901年にクリップの特許を取得しましたが、機能面でゼムクリップに及ばず、普及しませんでした。しかし、バーラーがクリップに関わったという事実は、第二次世界大戦中にノルウェーでゼムクリップが抵抗運動のシンボルとして使われるきっかけとなりました。当時、ドイツ占領下にあったノルウェーでは、ゼムクリップを服につけることで、亡命中のホーコン7世への忠誠とノルウェーの団結を示したのです。戦後、オスロ郊外にはバーラーを称える巨大なゼムクリップの彫刻が建てられました。

クリップの種類

クリップは用途によって様々な種類があります。以下に代表的なクリップを紹介します。

文房具

ゼムクリップ: 紙を挟むための最も一般的なクリップ。針金を曲げて作られており、プラスチック製のものもあります。
目玉クリップ（蛇の目クリップ）: 多数の紙を束ねることができる金属製のクリップ。バネ仕掛けで、つまみの部分が円形です。
ターンクリップ（ダブルクリップ・Wクリップ）: つまみを折り返すことでかさばらないクリップ。バインダークリップまたはフォウルドバッククリップとも呼ばれます。形状の異なる製品も存在します。
山形クリップ: つまみが山形になった比較的大型のクリップ。
バチ型クリップ: 三味線のバチをヒントに作られたクリップ。
スライドクリップ: 挟んで押すだけで使えるスライド式のクリップ。
連射式クリップ: 複数の書類をまとめて留めることができるクリップ。
用箋挟（クリップボード）: 紙を挟んで固定するための板状の文具。

その他にも、「シンブンクリップ」「ジョイントクリップ」「スーパークリップ」など様々な種類の文房具用クリップが開発されています。

電子部品

電子回路におけるクリップは、主に端子やリード線を接続するために使用されます。

みの虫クリップ: ビニールなどで覆われたクリップで、主に弱電に使われます。外観が蓑虫に似ていることからこの名前があります。
ワニグチクリップ: 本体がむき出しのクリップで、弱電用の小型からブースターケーブル用の大型まであります。つまむ部分が絶縁体で覆われたものもあります。
ICテストクリップ: ICのリードに測定器を接続するための工具。J字型の先端でICを挟み、ピンに測定プローブを接続します。

食品の保存

食品の保存にもクリップは使われます。

魚肉ソーセージの留め具: 魚肉ソーセージの両端についている金属製の留め具。
パック牛乳用クリップ: 牛乳パックの口を閉じることで、臭い移りを防ぎます。
バッグ・クロージャー: パンの袋などを閉じるためのクリップ。

その他

ペンクリップ: ペンに付帯し、ポケットや書類に挟んで持ち運びを便利にするための突起。
アパレル用クリップ: 型崩れ防止のため、服を台紙に固定する際に使われます。生地を傷つけないよう、合成樹脂製のものが使われます。
挿弾子: 銃弾を装填する際に使うクリップ。
マネークリップ: 紙幣を束ねるために使うクリップ。
ヘアクリップ: 髪をまとめる装飾品として使われるクリップ。
カラークリップ: ネクタイに用いるカラーピンの一種。
Binding & hem clip: 髪や裁縫に使われるクリップ。

クリップは、単に物を挟むだけでなく、その機能や形状を活かして様々な場面で活躍する、非常に便利な道具です。

関連項目

クリッパー
「クリップ」で始まるページの一覧
タイトルに「クリップ」を含むページの一覧
洗濯ばさみ
ばね (ほとんどのクリップはその一部か全体にばねの要素を含む)

外部リンク

* G.Itoya(Ginza Itoya) - 銀座伊東屋: 銀座伊東屋では、コーポレートシンボルとして「レッドクリップ」という赤色のゼムクリップを採用しています。

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