挿弾子

挿弾子（クリップ）とは

挿弾子（英: Clip）は、銃器に複数の弾薬をまとめて装填するための補助器具です。手で一発ずつ装填するよりもはるかに迅速に再装填が可能になります。形状や用途によっていくつかの種類があり、いずれも安価なプレス加工で製造され、繰り返しの使用は想定されていません。

小銃や拳銃だけでなく、ボフォース40mm機関砲のような火砲でも類似の器具が使われることがあります。

定義

日本の防衛省では、挿弾子（クリップ）を「弾倉への装弾を容易にするために用いる弾薬の保持具で、一般に数発の弾薬を保持するもの」と定義しています。

英語圏では、「Clip（挿弾子）」と「Magazine（弾倉）」が混同されることがありますが、本来、挿弾子は装填を補助する器具であり、弾倉は射撃時に弾薬を保持する部品です。ただし、組織や国によって定義が異なるため、厳密に区別することは難しい場合もあります。

例えば、イギリス軍の『小火器教本』では、アメリカで言うストリッパー・クリップを「チャージャー（Charger）」、エンブロック・クリップを「クリップ（Clip）」、そして、弾薬を保持する銃の部品を「マガジン（Magazine）」と定義しています。この定義に従えば、拳銃の弾倉はマガジンではなくクリップに含まれるとも解釈できます。

主な種類

挿弾子には主に以下の3つの種類があります。

1. ストリッパー型

ストリッパー・クリップ（Stripper clip）は、弾倉への装填を補助するのみで、装填後は取り外され、再利用または廃棄されます。このクリップを使用する銃や弾倉は、必ずしもクリップなしで装填できないわけではありません。

多くの場合、銃の機関部やボルトに挿弾子を取り付けるための溝があり、ここにクリップをはめ込んで指で弾薬を押し込むと、弾薬がクリップから外れて弾倉に送り込まれます。

ストリッパー・クリップにはいくつかの種類があります。

初期のものは、板バネで弾薬を固定する構造で、モーゼルGew98小銃などで使用されました。
次に、板バネの代わりに、本体の一部を切り起こした構造のものが開発されました。
一体型のものは、第一次世界大戦中にモーゼル小銃用として考案されましたが、真鍮製で強度に不安があり、長くは使われませんでした。実用的なものとしては、1940年代後半にソ連で開発されたSKSカービン用の鋼鉄製クリップが最初です。
その他、バネの代わりに一体型の側壁を持つものもあり、これは主にリムド弾を保持するために使用され、リー・エンフィールド小銃やモシン・ナガン小銃のクリップが代表例です。

2. エンブロック型

エンブロック・クリップ（En bloc clip）は、弾薬とクリップを「一括して」弾倉に装填するタイプで、クリップ自体は装填時か最終弾の発射後に排出されます。銃によっては、クリップが弾倉内で弾薬を保持する役割も担っており、クリップがないと弾倉が機能しなくなるものもあります。

エンブロック・クリップは、ジェームズ・パリス・リーとフェルディナント・マンリッヒャーという2人の銃器技師がほぼ同時期に開発したと言われています。

使用例としては、ドイツのGew88小銃、フランスの1890年式ベルティエ小銃、イタリアのベッテルリ＝ヴィタリM1870/87/15小銃やカルカノM1891小銃、オーストリア＝ハンガリー帝国のM1895小銃、ハンガリーの35M小銃、アメリカのM1895 リー・ネイビーやM1ガーランドなどが挙げられます。

マンリッヒャー型のクリップは非対称形状で単方向からの装填しかできませんでしたが、Gew88やカルカノでは左右対称のものが採用されました。ジョン・ペダーセン技師は逆方向からの装填が可能なクリップを開発し、ジョン・ガーランド技師がM1ガーランドで採用しています。

3. ムーン/ハーフムーン型

ムーン・クリップ（Moon clip）は、回転式拳銃（リボルバー）で使用される円形または星形のクリップです。銃のシリンダー全体を埋める数の弾薬を保持します。ムーン・クリップを使用することで、リムレス弾薬をリボルバーで使用することが可能になります。また、薬莢や撃ち残した弾薬を一度に取り出せるという利点があります。

しかし、使用済みの薬莢をクリップから取り外すのが困難で、専用の工具が必要になります。また、かさばって携帯に不便で、変形しやすいという欠点があります。

ハーフムーン・クリップは、ムーン・クリップの欠点を補うために採用されました。これは、シリンダーの半分を覆う数の弾薬を保持し、全弾装填のためには2つのクリップが必要です。

ムーン・クリップは、第一次世界大戦前に考案されました。1901年にアメリカで特許が取得されたJ・D・ガーフィールドとH・W・ラーソンの「リボルバー用ローディング・パック」が初期の発明の一つです。また、エルマー・E・ニールも1908年と1909年にそれぞれ特許を取得しています。

第一次世界大戦中、アメリカでは新式M1911ピストルの調達が難航し、既存の回転式拳銃と同じ設備で製造可能なM1917リボルバーが採用されました。この際、リムレス弾である.45ACP弾を使用するために、スミス&ウェッソン社社長ジョセフ・ウェッソンが専用のハーフムーン・クリップを考案しました。

関連項目

弾倉
スピードローダー

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