クリティカルセクション

クリティカルセクションの理解とその重要性

クリティカルセクション、または危険領域とは、複数の処理が同時に同じ計算資源にアクセスする際に発生するリスクのある部分を指します。この領域で、適切な管理がなければ、データの破損や整合性の問題が生じます。そのため、クリティカルセクションの処理には排他制御が不可欠です。

クリティカルセクションとは？

クリティカルセクションでは、特定の計算資源へのアクセスを制御し、アトミック性を保持しなければなりません。ここでの「アトミック性」とは、処理が不可分であることを意味します。すなわち、処理が中途半端に行われることがない状態です。

例えば、プログラムが共有資源に対して複数のスレッドやプロセスからアクセスされる場合、それぞれのスレッドが同じデータを同時に変更しようとすると、思わぬ結果が生じる可能性があります。このような事態を避けるため、クリティカルセクションではスレッドやプロセス間の排他制御が必要です。

具体例：ウェブページのカウンタプログラム

ウェブページの来訪者数をカウントするプログラムを考えてみましょう。このプログラムは、カウンタの値を記憶装置からメモリに読み込み、1増加させた後、元の記憶装置に書き戻すという一連の処理から成ります。この処理は以下のようなステップで行われます：
1. ディスク上のカウンタ値をメモリにロードする。
2. メモリのカウンタ値を1増加させる。
3. 更新されたカウンタ値をディスクに書き戻す。

しかし、排他制御を行わなければ、ユーザーが同時にページを訪れた場合に、カウンタが正しく更新されない可能性があります。例えば、ユーザーAがカウンタの値を100と読み取り、値を101に増加させた後、別のユーザーBが同時に同じカウンタの値を読み取る場合、再びカウンタは100に戻ります。最終的に、カウンタの値は101になってしまい、本来の値である102にならず、整合性が保たれません。

排他制御の必要性

このような問題を解決するために、クリティカルセクションには排他制御が必要です。この制御により、あるスレッドがクリティカルセクションに入っている間、他のスレッドがそのセクションに入るのを防ぎます。このため、スレッドがカウンタの更新処理を終えるまで、他のスレッドは待機することになります。

例えば、スレッドAが排他制御を行い、カウンタの値を正しくメモリに書き戻してからクリティカルセクションを終了することで、次にスレッドBが処理を行えるようになります。このようにすることで、意図した通りの結果が得られるのです。

排他制御を実現するAPI

マルチスレッド・マルチタスクをサポートするプラットフォームやプログラミング言語には、クリティカルセクションの排他制御を実施するためのAPIが用意されています。例として、Windowsでは特定のAPIや構造体を用いて排他制御を行います。POSIXスレッド（Pthreads）やJava、C#など、他の言語でもそれぞれの方式でスレッド間の排他制御が組み込まれています。

このように、クリティカルセクションと排他制御は、同時実行の環境下で計算資源の安定性と整合性を確保するために非常に重要な概念です。

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