クリノメーター

クリノメーターは、地質調査において地層や岩盤の構造を把握するために不可欠な道具です。主に、地層面などの面構造の走向と傾斜、線構造の測定に用いられます。地質調査におけるルーペ、ハンマーと並ぶ「三種の神器」の一つとして、地質学者や技術者にとって欠かせない存在です。

日本では、板付きクリノメーターが一般的で、方位磁針、傾斜計（振り子）、水準器で構成されています。特徴的なのは、読み取りやすさを考慮して方位磁針の東西表示が逆になっている点と、方位角度が90°表示になっている点です。本体の材質は、以前は木やアルミニウム合金が主流でしたが、近年ではプラスチック製も登場しています。振り子と磁針はオイルダンプされたカプセルに封入されており、安定した測定が可能です。さらに、デジタル式のクリノメーターも実用化され、より効率的な測定が可能になっています。

欧米では、ブラントンコンパスが一般的で、方位磁針、水準器、傾斜計で構成されています。

面構造の測定方法

走向の測定

クリノメーターの長辺を測定面に水平に当て、磁針の示す方位角を読み取ります。

傾斜の測定

測定面の最大傾斜方向、つまり走向に対して直角の方向にクリノメーターの長辺側の側面を当て、傾斜計の示す傾斜角を読み取ります。

補助走向板の活用

クリノメーターを直接当てることが難しい場合や、測定面が凸凹している場合には、補助走向板を使用します。測定面と平行に固定した板の面を測定することで、より正確な走向と傾斜を把握することができます。

線構造の測定方法

線構造の測定では、まず線構造が観察される層理面について、クリノメーターを用いて走向と傾斜を測定します。次に、層理面上に走向線を引き、その走向線と線構造のなす角（レーク）を分度器で測定します。また、トレンドは、走向線上で走向板を垂直に立てた状態でクリノメーターを用いて走向を測定することで、直接把握できます。プランジは、クリノメーターの長辺を走向線上で垂直に立てることで測定できます。

日本最古のクリノメーター

日本最古と思われるクリノメーターは、尚古集成館で発見されました。

クリノメーターの種類

従来のクリノメーター

木製またはアルミニウム合金製で、方位磁針と傾斜計がガラス板で覆われています。長年にわたり、多くの地質学者や技術者に利用されてきたモデルです。

プラスチック製のクリノメーター

プラスチック製で、方位磁針と傾斜計がオイルとともにカプセルに封入されています。オイル封入により磁針の振れが少なく、素早く正確な読み取りが可能です。水に強く壊れにくく、メンテナンスフリーな点が特徴です。軽量であることも利点です。

デジタルクリノメーター

内蔵されたセンサーで測定するデジタル式のクリノメーターです。測定結果を瞬時に読み取ることができ、記録も可能です。GPSを内蔵したモデルでは、位置情報も同時に記録できます。線構造の方向も容易に測定できるため、解析の効率が向上します。近年では、スマートフォン用のアプリケーションも開発されており、手軽にクリノメーターとして利用できます。これらのアプリは、地図アプリケーションと連携してルートマップを自動作成できるものもあります。国産のデジタルクリノメーターも登場し、従来の高価な外国製に比べて安価で機能的です。

クリノメーターは、地質調査において非常に重要な役割を担う道具であり、その種類も多様化しています。それぞれの特徴を理解し、目的に応じた最適なクリノメーターを使用することで、より正確で効率的な調査が可能になります。

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