傾斜計

傾斜計とは

傾斜計は、地盤の傾きを測定するための装置です。地盤のわずかな変動を捉え、地震や地殻変動の研究、構造物の安全管理など、幅広い分野で活用されています。

傾斜計の種類

傾斜計は、その測定原理や構造によって、大きく4つのタイプに分類できます。

1. Schluter式傾斜計

Schluterによって考案されたこの傾斜計は、天秤の原理を応用しています。天秤の支点近くに重心を置くことで、天秤の振動周期が非常に長くなり、地盤のわずかな傾斜にも敏感に反応します。具体的には、天秤の支点近くに設置された鏡に望遠鏡で光を当て、その反射像のずれを観測することで、地盤の傾斜角を測定します。この方式は、地盤の微細な変動を捉えるのに適しています。

2. Davidson-Darwin式傾斜計

DavidsonとDarwinによって開発されたこの傾斜計は、シンプルな構造ながら高精度な測定が可能です。短い棒の下端に錘を吊るし、その棒の両端を長さの異なる糸で吊り下げます。地盤が傾斜すると、吊り糸の長さの違いにより棒がねじれます。このねじれ角度を鏡で読み取ることで、地盤の傾斜角を算出します。この方式は、1/2000秒角程度の微小な傾斜も測定できるという特徴があります。

3. 水平振り子式傾斜計

水平振り子を利用した傾斜計は、水平振り子地震計と同様の構造を持っています。水平振り子は特に地盤の傾斜に敏感であるため、1/1000秒角以下の微小な傾斜も測定可能です。石本巳四雄の傾斜計もこのタイプに分類されます。水晶製部品を使用することで、温度変化による影響を最小限に抑え、より高精度な測定を実現しています。

4. 水準器式傾斜計

水準器式の傾斜計は、長い円筒の中に水を入れ、地中に水平に埋設します。地盤が傾斜すると、円筒両端の水面高さに差が生じます。この水面の変化を測定することで、地盤の傾斜角を算出します。特に、マイケルソンが開発した水準器式傾斜計は、長さ150mもの鉄製円筒を使用し、光の干渉を利用して水面の変化を精密に測定することで、1/10万秒角以下の傾斜まで測定可能という非常に高い精度を誇ります。

まとめ

傾斜計は、地盤の微細な変動を捉えるための重要な装置であり、その種類も多岐に渡ります。それぞれの傾斜計は、異なる原理と構造に基づいており、測定精度や特性も様々です。これらの特徴を理解することで、目的に合わせた最適な傾斜計を選択し、地盤変動の観測に役立てることができます。

出典: 鹿熊英昭：地震観測のセンサ 精密工学会誌 Vol.71 (2005) No.11 P1330-1334

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