クリープショー

クリープショー

『クリープショー』（Creepshow）は、1982年に公開されたアメリカ合衆国のホラーアンソロジー映画です。ホラー映画の巨匠として知られるジョージ・A・ロメロがメガホンを取り、『IT』や『シャイニング』などで知られるベストセラー作家スティーヴン・キングが初めてオリジナルの映画脚本を書き下ろしました。両者の才能が融合した本作は、複数の独立した短編物語で構成される形式を採用しています。

製作背景とテーマ

この映画の最大の特徴は、1950年代に人気を博したECコミック、特に『テイルズ・フロム・ザ・クリプト』のようなホラーや犯罪を題材としたアメリカン・コミックスへの深いオマージュである点です。作品全体を通して、コミックのコマ割りや色使い、そしてブラックユーモアが効いた結末といったスタイルを意識的に再現しています。製作チームには、ロメロ監督の盟友であり、特殊メイクアップアーティストのレジェンドであるトム・サヴィーニや、ECコミックの著名なアーティストであるジャック・ケーメンがポスターアートなどを手掛けるなど、各分野の著名なクリエイターが集結しました。主演の一人を務めたスティーヴン・キング本人に加え、彼の息子であるジョー・ヒル、そしてトム・サヴィーニも俳優として出演しており、スタッフ陣の多才さも垣間見えます。

作品の構成

物語は、ホラー漫画雑誌を取り上げられた少年ビリーが、その本を読み進めるという導入で幕を開けます。映画は、この漫画雑誌に掲載されているという設定の5つのショートストーリーで構成されるオムニバス形式で展開します。各エピソードは、コミックのページをめくるかのように始まり、その視覚的な表現もコミックのスタイルを踏襲しています。

エピソード概要（日本国内テレビ放映時のサブタイトルより）

1. 「父の日」：父の日の集まりのために集まった親戚一同。彼らは、かつて自分たちを支配し、今は亡き厳格な家長の遺産と、彼を殺害した叔母の到着を待ちわびています。過去の秘密が、墓場から這い上がってくる恐怖を呼び覚まします。
2. 「ジョディ・ベリルの孤独な死」：田舎で暮らす農夫ジョディ・ベリルの庭に、宇宙から隕石が落下します。金になると期待して隕石に触れたジョディでしたが、彼の体には不気味な異変が起こり始めます。
3. 「押し寄せる波」：妻の不倫相手であるハリー・ウェントワースを砂浜に連れ出したリチャード。リチャードの冷酷な復讐計画が実行されますが、潮の満ち引きと共に恐ろしい存在が迫ってきます。
4. 「箱」：大学の用務員が建物の地下で見つけた古い木箱。好奇心旺盛な大学教授デクスターが箱を開けてみると、中に潜んでいたのは正体不明の生き物でした。それは大学内に混乱と恐怖を巻き起こします。
5. 「奴らは群がり寄ってくる」：極度の潔癖症でゴキブリを激しく嫌悪する傲慢な実業家アプソン・プラット。自宅で害虫駆除に執心する彼の前に、想像を絶する数のゴキブリが姿を現し、彼を追い詰めます。

これらのエピソードは、それぞれ独立した物語でありながら、ユーモラスでグロテスク、そして時に哀愁を帯びたECコミック的なテイストで統一されています。

スタッフ・キャスト

監督: ジョージ・A・ロメロ
脚本: スティーヴン・キング
製作: リチャード・P・ルービンスタイン
製作総指揮: サラ・M・ハッサネイン
特殊メイク: トム・サヴィーニ
音楽: ジョン・ハリソン

主要キャストとしては、第2話で主演を務めたスティーヴン・キングのほか、プロローグに登場する少年ビリーを演じたのは彼の息子であるジョー・ヒルです。レスリー・ニールセン、エド・ハリス、テッド・ダンソンなど、後の有名俳優たちも出演しています。

評価と影響

本作はカンヌ国際映画祭で好評を博し、ワーナー映画による配給が決定しました。これは、ジョージ・A・ロメロ監督作品としては初めてメジャー映画会社によって配給された記念碑的作品となりました。商業的にも成功を収め、その後『クリープショー2/怨霊』（1987年）、『クリープショー3』（2006年）といった続編や、2019年には同名のテレビシリーズも製作されるなど、ホラーアンソロジー作品の代表例として後世に影響を与えています。コミック風の視覚効果や、古典的な怪奇譚と現代的な恐怖を融合させたスタイルは、今なお多くのファンに愛されています。

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