ジョージ・A・ロメロ

ジョージ・A・ロメロ：ゾンビ映画の巨匠

ジョージ・アンドリュー・ロメロ（1940年2月4日 - 2017年7月16日）は、アメリカ合衆国の映画監督、脚本家、編集者、俳優、そして作曲家としても活躍した人物です。ニューヨーク市で生まれ、キューバ系の父親とリトアニア系の母親の間に育ちました。彼は特にゾンビ映画の分野でその名を馳せ、「ゾンビ映画の第一人者」として広く知られています。また、ホラー映画の巨匠、カルト映画の鬼才という異名も持ち、その独特な作風は多くのファンを魅了しました。

映画への情熱と初期の活動

幼少の頃から映画に強い興味を抱いていたロメロは、特に『ホフマン物語』に感銘を受け、映画制作への道を志すようになります。ベラ・ルゴシ主演の『魔人ドラキュラ』やボリス・カーロフ主演の『フランケンシュタイン』といった古典的なホラー映画も彼のインスピレーションの源となり、後のゾンビ映画におけるキャラクター設定やホラー映画制作に大きな影響を与えました。1954年には、父親から買ってもらった8ミリカメラで短編映画『The Man from the Meter』を制作。撮影中に人形に火をつけ、ビルの屋上から落としたことが原因で警察に叱られたというエピソードも残っています。

高校卒業前の1959年には、アルフレッド・ヒッチコック監督の『北北西に進路を取れ』の撮影現場で使い走りのスタッフとして参加し、ハリウッド流の映画製作の効率性を重視する姿勢に疑問を抱き始めました。しかし、この経験を通じて映画製作の基礎を学ぶことにもなりました。

独立映画制作とゾンビ映画の誕生

カーネギー・メロン大学卒業後、ロメロは地元ピッツバーグで映像制作会社「ラテント・イメージ」を設立し、主にCMや産業用フィルムの制作を手がけました。しかし、劇場用映画制作への夢を諦めきれず、友人たちと資金を出し合い、週末を利用して映画制作に挑みます。リチャード・マシスン原作のSF小説『アイ・アム・レジェンド』に感銘を受けていたロメロは、この作品をヒントに1968年に『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』を制作。この作品は後にカルト的な人気を博し、ロメロの名前を世界に知らしめることとなりました。

1973年には、リチャード・P・ルービンスタインと共にローレル・グループ・プロダクションを設立し、現代吸血鬼をテーマにした『マーティン/呪われた吸血少年』（1977年）がヨーロッパで話題を集めました。その後、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』を観てロメロの才能に惚れ込んだイタリアのホラー映画監督ダリオ・アルジェントが共同出資を申し入れ、1978年には代表作となる『ゾンビ』を完成させます。この作品は低予算ながら世界中で大ヒットし、ロメロはホラー映画界の巨匠としての地位を確立しました。

ホラーからの脱却と新たな挑戦

『ゾンビ』の大成功の後、ロメロはホラー映画監督という枠にとらわれず、他のジャンルにも積極的に挑戦します。社会派ドラマやラブストーリーなど、幅広い作品を監督しました。

しかし、1982年には盟友スティーブン・キングの脚本で『クリープショー』を制作し、再びホラー映画の世界に戻ってきます。『ゾンビ』は2004年にリメイクされ、『ドーン・オブ・ザ・デッド』として公開されました。2005年には、デニス・ホッパーやアーシア・アルジェントなどの有名俳優を起用したゾンビ映画『ランド・オブ・ザ・デッド』を監督し、自身のルーツであるゾンビ映画を新たな形で表現しました。

多彩な活動と影響

ロメロは監督だけでなく、俳優としても活動しており、『マーティン』や『ゾンビ』、『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』などに出演しています。また、ジョナサン・デミ監督の『羊たちの沈黙』ではFBI捜査官役を演じました。ゲーム版のテレビCMを監督した縁で、日本のホラーゲーム『バイオハザード』の映画版監督にもオファーされましたが、製作サイドとの意見の相違により降板しています。

ハリウッドとの関係では、『モンキー・シャイン』や『ダーク・ハーフ』といった作品をメジャー・スタジオで監督しましたが、その製作方式とロメロの作風が合わず、頓挫する企画も少なくありませんでした。しかし、彼の創造性は多くのクリエイターに影響を与え続け、ゲームや映画など、様々な分野でロメロの作品が引用されています。

2010年には、FPSゲーム『コール オブ デューティ ブラックオプス』のゾンビモードに、ロメロ自身がゾンビとして登場しています。

その後と遺産

2009年にはカナダ国籍を取得し、長年住み慣れたピッツバーグからトロントへ移住しました。2011年には『ランド・オブ・ザ・デッド』の撮影で出会ったスザンヌ・デスロチャーと再婚しました。

2017年7月16日、ロメロは肺がんにより77歳でこの世を去りましたが、彼が残した作品は今もなお多くの人々に愛され、その影響は計り知れません。ジョージ・A・ロメロは、まさに映画史に名を刻む巨匠として、永遠に語り継がれるでしょう。

主な監督作品

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド (1968)
マーティン/呪われた吸血少年 (1977)
ゾンビ (1978)
クリープショー (1982)
死霊のえじき (1985)
ランド・オブ・ザ・デッド (2005)
ダイアリー・オブ・ザ・デッド (2007)
サバイバル・オブ・ザ・デッド (2009)

その他の活動

脚本: 「フロム・ザ・ダークサイド」シリーズ、「クリープショー2/怨霊」など
小説: 『ゾンビ』、『NIGHTS OF THE LIVING DEAD』など

備考

デーモン・アルバーンによる覆面プロジェクト、ゴリラズの楽曲「M1A1」には、『死霊のえじき』の冒頭シーンがサンプリングされています。また、ゴリラズの楽曲「Intro」には『ゾンビ』のサウンドトラックがサンプリングされています。

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