クルシュー砂州

クルシュー砂州とは

クルシュー砂州は、バルト海とクルシュー潟を隔てる、全長98kmにも及ぶ細長い砂州です。リトアニアとロシアのカリーニングラード州にまたがり、その美しい景観と独特の生態系から、2000年にユネスコの世界遺産に登録されました。

地理

砂州は、南のサンビア半島から北へ、リトアニア本土のクライペダの対岸まで伸びています。全長98kmのうち、北部の52kmはリトアニア領、残りの南部はロシア領です。砂州の幅は場所によって大きく異なり、最も狭い場所では400m、最も広い場所では3,800mにもなります。最高地点は海抜67.2mのヴェツェクルグ砂丘です。砂州にはマツ林が広がり、独特の景観を形成しています。

歴史

伝説によれば、クルシュー砂州は、海岸で遊んでいた巨人少女ネリンガによって形成されたとされています。しかし実際には、モレーンの島々が砂で繋がり、紀元前3000年頃に現在の形になったと考えられています。

800年から1016年頃には、異教の交易中心地であったカウプの支配下にありました。13世紀にはドイツ騎士団がこの地を占拠し、城を築きました。16世紀になると、森林伐採や過放牧により砂丘が移動し始め、村々を飲み込む事態となりました。そのため、プロイセン当局は1825年から大規模な森林再生と緑化活動を開始し、現在では砂州の大部分が森林で覆われています。

19世紀には、ラトビア人に近いクルシュー人やドイツ人、リトアニア人が住んでいました。クルシュー人は同化が進み、1945年以前にはほとんど見られなくなりました。20世紀には漁業が主な産業でしたが、ソ連崩壊後は観光地として賑わうようになりました。特にニダは、この地域出身の人々の子孫を中心に、多くの観光客が訪れます。

2002年から2005年にかけて、環境保護団体が、近くのD6油田開発計画に反対しました。この油田は砂州から22.5kmの地点にあり、石油漏れが起きた場合、環境と観光に深刻な影響が出ると危惧されたためです。反対運動は、国際的な支援を得られないまま、2005年に海上油田掘削基地が開設されました。

自治体区分

クルシュー砂州には、北から順にスミルティネ、アルクスニネ、ユオドクランテ、ペルヴァルカ、プレイラ、ニダ（以上リトアニア領）、モルスコエ、ルイバチー、レスノイ（以上ロシア領）の町村があります。リトアニア側はクライペダ市とネリンガ市に、ロシア側はカリーニングラード州のゼレノグラーツク地区に属します。砂州には、ゼレノグラーツクとスミルティネを結ぶ一本の道路が通っています。リトアニア本土とは繋がっていないため、スミルティネとクライペダの間にはカーフェリーが運航しています。

環境問題

クルシュー砂州はかつて手付かずの自然が残されていましたが、現在は様々な環境問題に直面しています。観光客の増加による海洋や海岸線の汚染、D6油田からの石油漏れの危険性、過剰な観光客による自然環境の破壊などが深刻です。そのため、特定地域でのハイキング禁止などの対策が取られています。

また、クルシュー砂州は、リトアニアやカリーニングラード州の他の地域に比べて自然災害のリスクが高く、嵐や森林火災にも警戒が必要です。

世界遺産

クルシュー砂州は、その独特な地形、浸食、森林破壊といった問題に直面しながらも、何千年もの間、人々が生活の中で作り上げてきた文化的景観が評価され、2000年に世界遺産として登録されました。文化遺産としての登録カテゴリーは「建造物群」と「サイト」で、「文化的景観」にも位置づけられています。

登録基準

世界遺産登録基準のうち、以下の基準を満たしています。

• - (5) ある文化（または複数の文化）を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。

まとめ

クルシュー砂州は、バルト海の美しい自然と独特な文化が融合した場所です。その一方で、環境問題や自然災害など、多くの課題も抱えています。この美しい景観を未来に残していくために、持続可能な観光と環境保護への取り組みが求められています。

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