クルジュ＝ナポカ市電

クルジュ＝ナポカ市電の概要

クルジュ＝ナポカ市電（ルーマニア語: Tramvaiul din Cluj-Napoca）は、ルーマニアのクルジュ＝ナポカ市にて運行されている路面電車です。この路線は、1980年代に再構築されたもので、現在はクルジュ＝ナポカ交通公社がその運営を担っています。市内の交通インフラの一環として、地域の移動手段に重要な役割を果たしています。

歴史

この路面電車の起源は1893年に遡ります。当初はスチームトラムによる運行が開始され、最盛期には9.3キロメートルの路線網が展開されていました。しかし、様々な事情により1902年に運行を休止し、1909年には全ての運行が廃止されてしまいます。その後の数十年、交通機関の主力は自家用車やバスに変遷しましたが、1970年代には幹線道路の混雑が深刻な問題となりました。

1980年代に入ると、ルーマニア政府は路面電車の再設置を決定し、1970年代の交通の混乱を改善する手段としてクルジュ＝ナポカにも路面電車が復活しました。1987年、東西を結ぶ新たな路線が開通し、以降市内の重要な交通手段となりました。

しかし、新設路線は限られた予算の中で整備されたため、早期に設備の劣化や騒音、振動が問題視されるようになりました。そこで、2011年以降は欧州連合の支援を受けて、路線や設備の改善を目的とした一連の近代化プロジェクトが実施されました。これにより、バリアフリーの促進とともに、超低床電車の導入が進められています。

運行体系

2020年時点でのクルジュ＝ナポカ市電は、全長13キロメートルの単一の路線があり、主要な停留所はクルジュ＝ナポカ駅と接続しています。この路線には100号線、101号線、102号線の3つの系統があり、特に100号線と102号線には車庫への入出場を行う派生系統も設定されています。運賃は市が運営するバスやトロリーバスと共通しており、2.5レイで乗車券を購入可能です。また、長期乗車券は電子決済によっても取得でき、利用者にとって便利な選択肢を提供しています。

車両

開通時にはブカレストやティミショアラ製の車両が導入されましたが、その品質問題から早期に老朽化が進行しました。1997年以降はドイツの都市から譲渡された車両による代替が始まりました。さらに、2010年代に入ると、ペサ120Ncやインペリオといった超低床電車の導入が活発に進められ、これによりサービスの改善につながっています。

現有車両

• - ペサ120Nc: 低床構造を備えた超低床電車で、運行開始後はおおむね4両が稼働しています。
• - インペリオ: ルーマニア国内で製造された超低床電車で、全28両が納入されています。

過去の車両

歴史的には、ティミス2やV2A、V3Aといった国産車両が存在していましたが、これらは老朽化や故障を理由に運用が終了しました。KT4Dなどのドイツ製ボギー車も譲渡され、多くは新しい車両に置き換えられました。これら過去の車両は一部が博物館によって保存され、歴史的な価値を保っています。

クルジュ＝ナポカ市電は現在、依然として地域の重要な交通手段であり、利用者へのサービス向上のための取り組みも継続されています。

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