クルジュ＝ナポカ

クルジュ＝ナポカ：歴史と文化が息づくルーマニアの古都

クルジュ＝ナポカは、ルーマニア北西部に位置するクルジュ県の県都であり、ルーマニア国内において、ブカレスト、ヤシに次ぐ第3の都市です。トランシルヴァニア地方の中心に位置し、その歴史は古代ローマ時代にまで遡ります。多様な文化が交差するこの街は、教育、文化、工業の中心地として重要な役割を担ってきました。

古代から中世へ：変遷の歴史

クルジュ＝ナポカの地には、先史時代から人が居住していました。2世紀初頭、ローマ帝国がダキアを征服すると、トラヤヌス帝がこの地に軍の駐屯地を置き、「ナポカ」と命名しました。その後、都市としての地位を高め、ローマ帝国の重要な拠点となりました。

民族大移動の時代には荒廃しましたが、13世紀にはハンガリー王によってザクセン人が入植し、「クラウゼンブルク」と呼ばれるようになりました。この地名は、ルーマニア語のクルジュの語源の一つともされています。14世紀には都市としての特許を得て、急速に発展。聖ミカエル大聖堂が建てられるなど、中世都市としての景観が形作られました。

トランシルヴァニア公国の一部として

16世紀にはトランシルヴァニア公国の一部となり、アルバ・ユリアが首都となるまで、公国の文化・宗教の中心地として栄えました。イエズス会の学校が建てられ、教育も発展。ハンガリー人の貴族や知識階級が集まる都市として、その重要性を増していきました。

18世紀には、ハンガリーで最初の新聞が発行され、演劇団が設立されるなど、文化的な発展も遂げました。一時、トランシルヴァニア大公国の首都として機能した時代もあり、政治の中心としての役割も担いました。

近代から現代へ：変革と発展

19世紀には、ハンガリー人の民族運動の中心地となり、1848年の革命では激戦地となりました。アウスグライヒ（妥協）後、オーストリア・ハンガリー帝国の一部となると、ブダペストに次ぐハンガリー王国第2の都市として発展しました。

第一次世界大戦後、ルーマニア王国の一部となりましたが、第二次世界大戦中にはハンガリーに編入されるなど、複雑な歴史を歩みました。戦後、再びルーマニア領となり、1974年に現在のクルジュ＝ナポカという名称になりました。

経済と交通の要衝

クルジュ＝ナポカは、ビール醸造、木製家具製造、乳製品加工、毛織物生産などの産業が盛んです。近年では、情報通信産業も発展しています。鉄道と道路の結節点であり、交通の要衝としても機能しています。クルジュ＝ナポカ国際空港からは、国内外への便が運航されており、国際的なアクセスも良好です。

教育の中心地

クルジュ＝ナポカは、ヴィクトル・バベシュとボーヤイ・ヤーノシュの名を冠したバベシュ＝ボーヤイ大学をはじめ、多くの大学が集まる大学都市です。ハンガリー時代のコロジュヴァール大学はセゲドに移転しましたが、クルジュ＝ナポカは現在もルーマニアの教育の中心地としての役割を担っています。

クルジュ＝ナポカは、多様な歴史と文化が織りなす魅力的な都市です。古代ローマ時代から現代に至るまでの様々な時代の痕跡が残り、訪れる人々を魅了します。教育、文化、産業の中心地として、ルーマニアの発展に貢献し続けるクルジュ＝ナポカは、今後もその重要性を増していくことでしょう。

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