クルツSPz 11-2装甲偵察車

SPz.11-2装甲偵察車クルツ

SPz.11-2装甲偵察車クルツは、1950年代に開発された西ドイツの歩兵戦闘車、装甲偵察車です。名称の「クルツ」は短いという意味で、同時期に開発されたSPz.12-3ラングの長い車体に対し、その名が付けられました。この車両の原型はフランスのオチキス社の試作車両TT6であり、1958年から1962年にかけて2,374輌が生産されました。うち1,600輌以上はマギルス・ドイツ社によってライセンス生産されました。

概要

クルツは、多用途な歩兵戦闘車型のタイプ11-2を基にしており、砲塔にはイスパノ・スイザ社製の86口径20mm機関砲HS820が装備されています。この武装には500発の弾薬が収納され、発射速度は800～1,000発/分を誇ります。通常の交戦距離は400～1,200mで、最大射程は7,500mにも達します。砲塔の旋回は手動で行われ、粗動と微動を設定できる機構が搭載されています。また、隠蔽目的で発煙弾発射機も備えています。乗員は合計5名で、車長や操縦手にはペリスコープ、小銃手には50mmの防弾ガラスがついた視察孔が用意されています。この車両は330Lの燃料タンクを持ち、最大400kmの行動距離を持ちます。また、水を超える能力もあり、1.5mの壕を越え、0.6mの堤防を登ることができるほか、最大0.7mの渡河能力を持っています。

運用

クルツ装甲偵察車は1974年まで西ドイツの機械化歩兵大隊に配備され、その後1982年まで装甲偵察車として利用されていました。しかし、この車両は騒音が大きく、偵察任務には不向きでした。特に、後進速度は6km/hであり、これは徒労よりも遅いとされました。また、前方の駆動輪の車軸が脆弱で、悪条件下では破損するおそれがありました。さらに、砲塔に搭載されている20mm機関砲は、射撃時に左にずれる傾向があり、弾薬の交換は困難でした。冬季には、操縦手だけが暖房を享受し、他の乗員は冷たい環境で任務を遂行しなければなりませんでした。電装系も貧弱で、無線の使用は電圧が十分である場合に限られていました。最終的に、クルツの偵察任務はルクス装輪装甲車に引き継がれ、西ドイツ軍に限定されていました。

バリエーション

クルツには様々なバリエーションが存在し、基本型のSchützenpanzer 11-2 Kurzは、86口径20mm機関砲 HS820を装備した小型砲塔を持っています。Beobachtungspanzer 22-2は砲兵観測車型で、2つの無線機を備え、5名の乗員が対応します。Sanitätspanzer 2-2 kurzは装甲救急車型で、担架2床を装備し、看護兵2名と操縦手の3名が乗車します。Mörserträger 51-2は81mm自走迫撃砲を装備し、50発の弾薬を搭載可能です。Radarpanzer 91-2は自走レーダーを搭載し、Nachschubpanzer 42-1は兵員輸送車両として機能します。特記すべきは、Spähpanzer SP I.C.という90mm砲を備えた偵察用軽戦車も試作され、現在はコブレンツの国防技術博物館に展示されています。

登場作品

クルツ装甲偵察車は、戦車ゲーム『World of Tanks』においてドイツ軽戦車「Spähpanzer SP I C」としても登場します。

もう一度検索