クレイスラ

クレイスラ（ギリシア語: κλεισούρα）は、「囲まれた土地」または「隘路」を意味する言葉です。ビザンツ帝国において、防備を強化した峠、またはその周辺地域を防衛する目的で設けられた軍事地区を指す用語として用いられました。

7世紀後半までには、より広範囲な辺境地域を指すようになり、大規模なテマ（軍管区）とは区別されました。特に、タウロス山脈やアンチタウロス山脈に沿ったビザンツ帝国東方の国境地帯、つまりイスラーム帝国との境界線沿いに多く存在しました。ヨーロッパ側では、初期にはストリュモンのみがクレイスラと呼ばれていました。

クレイスラ、またはクレイスラルキアは、クライスラルケス（ギリシア語: κλεισουράρχης）と呼ばれる司令官の指揮下に置かれた、自治的な軍事管轄地域でした。クライスラルケスは、その地域の防衛責任者であり、軍事的な指揮権を持っていました。

クレイスラの多くは、その後、より大規模なテマへと昇格しました。10世紀以降になると、クレイスラという用語は次第に使われなくなりました。ビザンツ時代後期には、ドルンゴスという用語が同様の意味合いで使用されるようになりました。

興味深いことに、キリキアやジャズィーラといった地域におけるイスラーム勢力側でも、同様の概念を表す用語としてスグールという言葉が存在しました。これは、国境地帯における防衛の重要性が、ビザンツ帝国とイスラーム勢力の間で共通認識されていたことを示唆しています。

クレイスラの存在は、ビザンツ帝国が国境防衛にどれほど力を入れていたかを示す好例です。自然の地形を利用した防衛拠点と、有能な司令官による指揮系統によって、帝国の安全を確保していました。

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