クレメンス6世 (ローマ教皇)

クレメンス6世（Clemens VI）

クレメンス6世は、1291年に生まれ、1352年に亡くなったフランス出身の教皇で、アヴィニョン捕囚の時代に在位していました。彼の本名はピエール・ロジェであり、教皇としての在位期間は1342年から1352年です。

教会の組織改革と財政の悪化

彼は教会の組織機構の整備を行いましたが、その過程で財政が悪化しました。特に、1348年にナポリ女王兼プロヴァンス女伯ジョヴァンナからアヴィニョン市を購入したことが影響しています。また、前教皇ベネディクトゥス12世が始めた教皇庁宮殿の建設にも関与し、これによりさらなる財政的負担が課されることになりました。

教皇庁の建設には全国から画家や職人が集まり、国際ゴシック様式の普及に寄与しましたが、彼の豪華な生活は多くの人々の記憶に残ります。「どんな君主も、彼の金遣いの派手さには及ばない」と言われるほどの派手で独自のスタイルを持ち、白テンの毛皮を多く所持していました。また、ギャンブルや競馬に興じ、教皇の宮殿はいつも女性を迎えていたとされています。

コーラの登場とローマ帰還の試み

1343年、ローマ市民の代表であるニコラ・ディ・リエンツォ（通称コーラ）がアヴィニョンを訪れ、教皇のローマ帰還を熱心に訴えました。クレメンス6世はコーラの情熱に感銘を受け、第2回聖年（1350年）を実施することを決定し、彼に祝福を与えました。コーラはローマに帰ると、市での権力を握りましたが、その後の振る舞いが教皇庁から批判を受け、失脚してしまいました。

政治的な動きと皇帝擁立

1346年には、神聖ローマ皇帝ルートヴィヒ4世を廃位し、カール4世を新たに擁立しました。この背景には、教皇と皇帝との対立が存在していました。教皇としての役割を果たしながらも、1349年には多くの巡礼者がローマを訪れましたが、クレメンス6世自身がローマに赴くことはありませんでした。

ペストとその影響

1348年からアヴィニョンはペストの影響を受けており、クレメンス6世はこの状況に対処するため、墓地用の土地を買い入れ、病人に対する赦免を行い、医師による死体解剖を許可しました。また、ユダヤ人に対する迫害を弁護する勅書を発表しましたが、彼の努力にもかかわらず、同年5月には避難を余儀なくされました。

結論

クレメンス6世の教皇としての役割は、教会の改革と豪華な生活様式、さらには政治的な策略とペストという未曾有の試練によって特徴付けられました。その後のアヴィニョン捕囚の終焉は、1377年にローマに帰還するまで続くこととなったのです。

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