クレメント・ゴットワルト

クレメント・ゴットワルト：チェコスロバキアの独裁者

クレメント・ゴットワルト（Klement Gottwald, 1896年11月23日 - 1953年3月14日）は、20世紀前半のチェコスロバキアにおいて、共産党の指導者として絶大な権力を振るいました。首相、大統領を歴任し、スターリン主義に基づく独裁政治を推し進めた人物として知られています。

生い立ちと共産党での台頭

ゴットワルトは、オーストリア＝ハンガリー帝国のメーレン地方（現在のチェコ共和国）で、農夫の子として生まれました。1921年のチェコスロバキア共産党創設に参加し、1925年からは中央委員会のメンバーとなります。その後、党の要職を歴任し、着実に政治的な地位を確立していきました。1945年から1953年まで共産党委員長を務め、その間、副首相、首相、そして大統領へと上り詰めました。

権力掌握と独裁政治

第二次世界大戦後、チェコスロバキアでは、亡命政府の代表であったエドヴァルド・ベネシュが大統領に復帰し、ゴットワルト率いる共産党と連立政権を樹立します。1946年の選挙で共産党は第一党となり、ゴットワルトは首相に就任しました。しかし、1948年2月のクーデター（「勝利の二月」）によって政権を掌握し、ベネシュ大統領を辞任に追い込み、同年6月、自らが大統領に就任しました。これにより、チェコスロバキアは共産党による一党独裁体制へと移行します。

ゴットワルト政権は、工業や農業の国有化を積極的に推進し、社会主義的な経済政策を実行しました。しかし、その政治手法はスターリン主義的であり、反対勢力の粛清を徹底的に行いました。まず非共産主義者を排除し、その後、党内の反対派や、ソ連に批判的な共産主義者も粛清の対象としました。

粛清の嵐

ゴットワルトによる粛清は、多くの犠牲者を生みました。元共産党書記長のルドルフ・スラーンスキーや元外務大臣のヴラジミール・クレメンティスといった幹部も粛清され、スラーンスキーとクレメンティスは絞首刑に処されました。グスターフ・フサークも終身刑を受けましたが、後に名誉回復され、第一書記を務めています。これらの粛清は、恐怖政治を確立し、ゴットワルトの権力を絶対的なものとしました。

突然の死とその後

1953年3月、ゴットワルトはスターリンの葬儀に出席した後、肺炎を患い、その5日後に急死しました。死因は心臓病、深酒、そして梅毒であったと伝えられています。遺体は防腐処理され、霊廟に安置されましたが、1962年に撤去され、火葬されました。

ゴットワルトを巡るエピソード

ゴットワルトの伯父はアメリカに移住しており、その孫娘はロバート・ケネディの妻、エセル・ケネディになっています。また、1989年に発行された100コルナ紙幣に肖像が使用されていましたが、翌年には流通が停止されました。2005年にチェコ国内で行われた「最悪なチェコ人」の投票では、最多の票を集めて1位に選ばれています。

クレメント・ゴットワルトは、チェコスロバキアの歴史において、共産主義政権を確立し、独裁政治を行った人物として、賛否両論が入り混じる評価を受けています。彼の政治的遺産は、その後のチェコスロバキア、そしてチェコ共和国の歴史に大きな影響を与え続けています。

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