クレージー大作戦

『クレージー大作戦』は、1966年に製作されたクレージーキャッツの主演による映画で、東宝と渡辺プロダクションが協力して制作しました。この作品は、同年に日本で公開されたイタリア映画『黄金の七人』にインスパイアを受け、クレージーキャッツのメンバーそれぞれの個性を際立たせつつ、ストーリーの中で重要な役割を果たすよう工夫されています。ジャンルはサスペンスとアクション、そして喜劇が融合したユニークな作品です。

本作の脚本には、笠原良三、池田一朗、田波靖男、坪島孝らが携わり、その中には中原弓彦（小林信彦）や監督を務めた古澤憲吾なども加わる形で、綿密なブレインストーミングが行われました。特に、古澤憲吾と坪島孝の二人は、東宝クレージー映画の制作を支えてきた要となる存在であり、その双方が本作でもメインスタッフとして強力に関与しています。

映画のストーリーは、石川五郎（植木等）が悪人から金を奪うことを仕事にしているところから始まります。彼は、銀座にある宝石店で堂々と強盗をし、そのまま自身が逮捕されます。その目的は、砂走刑務所にいる金庫破りの天才、大平久（谷啓）と組むことにあります。石川は、大平が所属する囚人バンドに参加し、看守の加古井守（ハナ肇）の表彰式をきっかけに、彼らが脱走を試みます。こうして、石川たちは日本の暗黒街のボスである“頭取”が持つ10億円を奪うための壮大な作戦を展開していくのです。

映画には、さまざまなキャラクターが登場し、それぞれが物語を豊かに彩ります。石川五郎役の植木等を始め、加古井守役のハナ肇、大平久役の谷啓など、名優たちが集結し、軽妙なやり取りやスリリングな展開を繰り広げます。たとえば、囚人バンドのメンバーとの賑やかな演奏シーンや、迫力のある脱走劇など、観客を引き込む要素がふんだんにあります。

また、本作の音楽も見逃せません。青島幸男の作詞による楽曲や、萩原哲晶の作曲によるものが多数使用されており、クレージーキャッツのパフォーマンスが鮮やかに表現されています。特に、映画内の挿入歌として使われた「たるんどる節」や「大作戦マーチ」は、その軽快なリズムと楽しい歌詞で映画に華を添えています。

さらに、撮影や美術、編集に至るまで多くの才能が一つの作品に結集しており、視覚的にも楽しませてくれる要素が詰まっています。ストーリーの背景となる日本各地のロケ地も注目され、この映画はその時代の風景や文化を垣間見ることができます。

『クレージー大作戦』は、ただのコメディ映画に留まらず、社会の暗い部分に光を当てつつ、ユーモアやエンターテイメントの要素を巧みに組み合わせた魅力的な作品です。72分の上映時間の中で、観客に笑いとアクションを提供し続け、この作品は日本映画の中でも特異な存在感を放っています。

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