クレーマ

クレーマ (Crema)

クレーマは、イタリア共和国ロンバルディア州クレモナ県に位置する、人口およそ3万4千人を擁する基礎自治体（コムーネ）です。セリオ川のほとりに広がるこの街は、古くからカトリック教会の司教座が置かれた地でもあります。また、後のローマ教皇ピウス9世を輩出したマスタイ・フェレッティ家がこの地に起源を持つとする資料も存在します。

地理

クレーマはロンバルディア州の平野部に位置し、周囲を多くのコムーネに囲まれています。気候区分上は「zona E, 2506 GG」に分類され、冬季には比較的寒さが厳しくなります。一方、イタリア国内の地震リスク階級では「zona 3 (sismicità bassa)」とされており、地震活動が比較的少ない地域と見なされています。

歴史

クレーマの起源については複数の説があります。6世紀におけるランゴバルド人のイタリア侵攻に関連づける見方が有力ですが、さらに遡り4世紀には、古代ケルト人やエトルリア人の子孫がこの地に集落を築いたとする説も唱えられています。

歴史書に最初に登場するのは11世紀初頭で、当時はカミザーノ伯爵の領土でした。その後、強力なトスカーナ侯であったボニファーチョ・ディ・カノッサとその娘マティルデに支配権が移りますが、マティルデは1097年にクレーマをクレモーナの司教に譲渡しました。この頃からクレーマは次第に繁栄を始め、特に羊毛産業は街の主要な経済活動となり、その重要性は19世紀に至るまで続きました。

中世盛期には、神聖ローマ皇帝フリードリヒ1世に対抗するためミラノと同盟を結びますが、その結果として1159年に皇帝軍によって街は徹底的に破壊されてしまいます。しかし、1185年のコンスタンスの講和の後、街の再建と強化が許可され、新たな城砦（カストルム）が建設されました。その後、皇帝ハインリヒ6世は同盟関係にあったクレモーナにクレーマを返還します。1199年には、街は新しい城壁などによってさらに防御力を高めました。13世紀に入ると街は豊かな商業都市として栄え、壮麗なクレーマ大聖堂や市庁舎の一部であるプレトリオ宮殿など、現在も街のシンボルとなっている多くの重要な建築物がこの時期に築かれました。

14世紀には再び支配者が変わります。1335年にはミラノ公国のヴィスコンティ家を率いるアッツォーネ・ヴィスコンティの支配下に入りますが、1361年には恐ろしいペストの流行が街を襲いました。ヴィスコンティ家の支配は続き、1403年から1423年の一時期は地元のベンツォーニ家が統治しましたが、再びヴィスコンティ家の手に戻りました。そして1449年以降、クレーマは約350年間にわたりヴェネツィア共和国の統治下に入ることになります。

ヴェネツィア共和国領となったことは、スペインの支配下で衰退が進んでいたミラノ公国とは対照的に、クレーマに比較的長期的な安定をもたらしました。この期間には、現在も残る美しい市庁舎（1525年 - 1533年建設）や司教館など、多くの建築プロジェクトが進められました。また、1490年には市街地からやや離れた場所にサンタ・マリア・デラ・クローチェ教会が建てられ、1580年には正式に司教所在地となりました。17世紀にはかつて隆盛を誇った工業が陰りを見せ始めますが、農業は発展を続け、1796年には農業を専門に教える大学が開校するなど、この時代の経済を支えました。

18世紀末、フランス革命戦争の波がイタリアにも及び、1797年にフランスによって占領されます。ナポレオン失脚後、1814年からはオーストリア帝国の支配下に入りましたが、19世紀半ばのイタリア統一運動を経て、最終的に統一イタリア王国の一部となりました。

行政と文化

クレーマ市内には、中心部から離れた場所に複数の分離集落（フラツィオーネ）が存在し、それぞれが独自のコミュニティを形成しています。

国際的な交流としては、フランスのムランや中華人民共和国の南寧市と姉妹都市提携を結んでいます。

近年、クレーマはルカ・グァダニーノ監督の映画『君の名前で僕を呼んで』の主要なロケーションとして選ばれたことにより、世界中の映画ファンや旅行者の注目を集め、その美しい街並みが広く知られるようになりました。

クレーマは、その多様な歴史的背景と、現代に至るまで受け継がれる文化的な魅力を持つ街として、訪れる人々を惹きつけています。

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