クレーン・デリック運転士

クレーン・デリック運転士とは

クレーン・デリック運転士は、労働安全衛生法によって定められた国家資格の一つです。この資格を持つことで、クレーンやデリックといった特定の機械を操作し、重量物を安全に移動させる業務に従事することができます。2006年4月1日に、従来のクレーン運転士とデリック運転士の免許が統合され、現在のクレーン・デリック運転士免許が新設されました。以前の免許取得者（デリック運転士免許のみ所持者を除く）は、この新免許を所持しているとみなされます。

ただし、一定の規模以下のクレーンやデリックについては、技能講習や特別教育を受けることで運転・操作が可能です。

資格の概要

労働安全衛生法第61条では、事業者が特定の業務を行う際、都道府県労働局長の免許を受けた者、または登録を受けた者が実施する技能講習を修了した者、その他厚生労働省令で定める資格を有する者以外を就業させてはならないと定められています。この就業制限の対象となる業務の一つに、つり上げ荷重が5トン以上のクレーン（跨線テルハを除く）およびデリックの運転があります。これらの業務を行うには、原則としてクレーン・デリック運転士免許が必要となります。

免許の種類

クレーン・デリック運転士免許には、以下の3つの区分があります。

クレーン・デリック運転士免許: すべてのクレーンとデリックを運転・操作できます。
クレーン・デリック運転士免許（クレーン限定）: すべてのクレーンを運転・操作できます。
クレーン・デリック運転士免許（床上運転式クレーン限定）: 床上運転式クレーン（5トン以上）を運転・操作できます。5トン未満のクレーンも運転可能です。

例外

床上操作式クレーン運転技能講習: 床上操作式クレーン（運転者が荷の移動とともに移動する方式）の運転は、技能講習を修了することで可能になります。この資格はクレーン・デリック運転士資格とは異なります。

特別教育: つり上げ荷重5トン未満のクレーン・デリックの運転には、クレーン・デリック運転士資格は必須ではありませんが、特別教育を受ける必要があります。具体的には、以下の特別教育があります。
クレーンの運転の業務に係る特別教育: つり上げ荷重0.5トン以上5トン未満のクレーン、およびすべての跨線テルハ（5トン以上を含む）を運転・操作できます。
デリックの運転の業務に係る特別教育: つり上げ荷重0.5トン以上5トン未満のデリックを運転・操作できます。

なお、つり上げ荷重0.5トン未満のクレーン・デリック、および5トン未満の跨線テルハの運転には、法令上クレーン・デリック運転士資格は不要ですが、安全衛生上、取得が推奨されます。

免許試験について

免許試験は、全国の安全衛生技術センターで実施されます。実技教習は、都道府県労働局長登録教習機関で受けることができます。

試験の流れ

学科試験は安全衛生技術センターで受験する必要があります。
実技試験は、安全衛生技術センターで受験するか、登録教習機関で「クレーン運転実技教習」を修了することで代替できます。
センターで学科・実技の両方を受験する場合は、学科合格後に実技試験を受ける必要があります。
登録教習機関で実技教習を受ける場合は、学科試験前に実技教習を修了することも可能です。

試験免除

以下の公共職業能力開発施設の課程修了者は、学科・実技試験が免除され、申請のみで免許が付与されます。

独立行政法人雇用・能力開発機構大阪センター（ポリテクセンター大阪港）の港湾荷役科
独立行政法人雇用・能力開発機構愛知センター（ポリテクセンター名古屋港）の港湾荷役科
ポリテクセンターのクレーン運転科

受験資格

受験資格は特にありませんが、免許交付は18歳以上である必要があります。

試験科目

学科試験
クレーンおよびデリックに関する知識
原動機および電気に関する知識
クレーンの運転に必要な力学に関する知識
関係法令
実技試験
クレーンの運転
クレーンの運転のための合図

クレーン限定免許の場合、学科試験からデリックに関する部分が除外されます。床上運転式クレーン限定免許の場合も同様に、デリックに関する部分が除外され、実技試験は床上運転式クレーンを使用して行われます。
揚貨装置運転士免許所持者は、力学が免除されます。
実技試験には、デリックの運転・操作は含まれません。

クレーン運転実技教習科目

クレーンの基本運転（4時間）
クレーンの応用運転（4時間）
クレーンの合図の基本作業（1時間）
修了試験が課せられます。

技能講習と特別教育

クレーン・デリック運転士資格とは別に、一定の規模以下のクレーン・デリックを運転・操作するための技能講習や特別教育があります。

床上操作式クレーン運転技能講習

技能講習は都道府県労働局長登録教習機関で行われます。
講習時間や科目は、クレーン等運転関係技能講習規程に基づきます。
講習時間は、所持免許や修了済みの技能講習によって異なりますが、原則として20時間です。
移動式クレーン運転士免許、小型移動式クレーン運転技能講習修了者、揚貨装置運転士免許、玉掛け技能講習修了者、旧デリック運転士免許所持者は、学科と実技の一部が免除され、16時間となります。
特定の業務経験者は、実技の一部が免除される場合があります。
講習内容
学科: 床上操作式クレーンに関する知識、原動機および電気に関する知識、力学に関する知識、関係法令
実技: 床上操作式クレーンの運転、運転のための合図
学科・実技ともに修了試験があります。

クレーン・デリックの運転の業務に係る特別教育

特別教育は各事業所、または都道府県労働局長登録教習機関で行われます。
履修時間は13時間以上です。
クレーンの運転の業務に係る特別教育
学科: クレーンに関する知識、原動機および電気に関する知識、力学に関する知識、関係法令
実技: クレーンの運転、運転のための合図
デリックの運転の業務に係る特別教育
学科: デリックに関する知識、原動機および電気に関する知識、力学に関する知識、関係法令
実技: デリックの運転、運転のための合図

関連資格

クレーン運転士
移動式クレーン運転士
デリック運転士
揚貨装置運転士
技能講習による資格一覧
特別教育による資格一覧
日本の都道府県労働局長登録教習機関一覧
日本の建設に関する資格一覧

外部リンク

公益財団法人安全衛生技術試験協会
* 公益社団法人神奈川労務安全衛生協会

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