クロコダイル科

クロコダイル科：多様なワニたちの世界

クロコダイル科(Crocodylidae)は、ワニ目に属する爬虫類の一科です。その特徴は、背面を覆う大型の鱗、そして種によって大きく異なる口吻（吻部）にあります。例えば、ジョンストンワニやアフリカクチナガワニは細長い口吻を持つ一方、ヌマワニは幅広い口吻が特徴です。また、多くの種では口を閉じた状態でも下顎の第4歯が外から見えますが、これはアリゲーター科の一部にも見られるため、科を識別する絶対的な特徴ではありません。さらに、腹部にある鱗板には感熱器官（濾胞）が存在し、周囲の温度変化を感知する役割を果たしていると考えられています。

形態と分類：進化と多様性の謎

クロコダイル科の形態学的特徴と、近年進展した分子系統解析に基づく遺伝情報から、その分類体系は常に更新されています。以前は、インドガビアルがクロコダイル科に含まれるという説もありましたが、現在の分類では独立したガビアル科に分類されています。

2003年には、ミトコンドリアDNAの解析により、ナイルワニが遺伝的に異なる2系統に分けられる可能性が示唆されました。これは、西アフリカの個体群が、東アフリカや南アフリカの個体群よりもジョンストンワニに近縁であることを示しています。また、アフリカクチナガワニがワニ属ではなく、ニシアフリカコビトワニに近縁であるという解析結果も得られ、属レベルでの再分類が提唱されています。さらに近年では、アフリカクチナガワニが2種に分割される可能性や、ニューギニアワニの新種記載などが報告されています。このように、遺伝子解析技術の進歩によって、クロコダイル科の分類体系は常に進化し続けています。

クロコダイル科の主要な属と種

現在、クロコダイル科には、以下の属と種が知られています（Reptile Database(2021)、中井(2023)による）。

クロコダイル属 (ワニ属) _Crocodylus_
_Crocodylus acutus_ アメリカワニ
_Crocodylus halli_ ミナミニューギニアワニ
_Crocodylus intermedius_ オリノコワニ
_Crocodylus johnstoni_ オーストラリアワニ（ジョンストンワニ）
_Crocodylus mindorensis_ フィリピンワニ（ミンドロワニ）
_Crocodylus moreletii_ グアテマラワニ（モレレットワニ）
_Crocodylus niloticus_ ナイルワニ（アフリカワニ）
_Crocodylus novaeguineae_ ニューギニアワニ（パプアワニ）
_Crocodylus palustris_ ヌマワニ（インドワニ）
_Crocodylus porosus_ イリエワニ（ウミワニ）
_Crocodylus rhombifer_ キューバワニ
_Crocodylus siamensis_ シャムワニ（タイワニ）
_Crocodylus suchus_ ニシアフリカワニ（セベクワニ）

クチナガワニ属 _Mecistops_
_Mecistops cataphractus_ ニシアフリカクチナガワニ（クチナガワニ）
_Mecistops leptorhynchus_ チュウオウアフリカクチナガワニ（フスクスクチナガワニ）

コビトワニ属 _Osteolaemus_
_Osteolaemus osborni_ コンゴコビトワニ
* _Osteolaemus tetraspis_ ニシアフリカコビトワニ（ニシアフリカコガタワニ）

人間との関係：保護と規制

日本では、クロコダイル科全体が特定動物に指定されており、2019年6月に愛玩目的での飼育が禁止されました（2020年6月施行）。これは、これらのワニの生態系への影響や、飼育における危険性を考慮した規制です。今後、これらのワニの保全と持続可能な共存に向けた取り組みが重要になります。

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