ナイルワニ

ナイルワニ（Crocodylus niloticus）

ナイルワニは、爬虫類に属するワニで、アフリカ大陸を中心に広がる多様な生息地に生息します。サハラ砂漠とその南端を除く地域、さらにはマダガスカルの西部にも見られます。その名の由来は、モデル標本がエジプトに由来し、種小名の「niloticus」は「ナイル[[川]]の」を意味しています。

形態的特徴

ナイルワニは、全長が約400センチメートルから550センチメートルに達し、比較的長い口吻が特徴的です。その口吻の基部は横幅の1.5倍から2倍程度になり、瘤や隆起は見られません。また、頚部に並ぶ鱗（頸鱗板）は四角形で、通常4枚展開しています。背面の鱗（背鱗板）は整然と配置されており、全体の体色は暗黄褐色を呈しています。幼体の時期には黒褐色の横縞が存在しますが、成長に伴ってそれは不明瞭になり、色も徐々に薄くなります。}

分類と亜種

ナイルワニは、6つの亜種に分けられることがあり、以下のような名前がついています：

• - Crocodylus niloticus niloticus：基本亜種
• - Crocodylus niloticus africanus：アフリカ亜種
• - Crocodylus niloticus chamses：特定地域に生息する亜種
• - Crocodylus niloticus cowiei：特異な特徴を持つ亜種
• - Crocodylus niloticus madagascariensis：マダガスカル固有の亜種
• - Crocodylus niloticus pauciscutatus：特定の地域に適応した亜種

生態

ナイルワニは主に淡水域に生息していますが、汽水域でも見られます。河川、湖、入江、マングローブ林などの環境で見られ、捕食者としてはナイルオオトカゲやライオンが挙げられます。興味深いことに、ライオンが襲うことがある一方で、ナイルワニは逆にライオンを狙うこともあります。

その食性は明確で、多くの魚類やカエルを捕食しますが、シマウマやオグロヌーといった中・大型哺乳類も捕食することがあります。幼体は昆虫や甲殻類を主に食べますが、時にはカバの幼体を狙うこともあります。ただし、成体のカバには歯が立たないとされています。

繁殖は卵生であり、主に雨季に水辺に穴を掘り、10から20個の卵を産みます。卵は約84日から90日で孵化し、孵化した幼体は一定期間、親によって保護されます。

人間との関係

ナイルワニはその気性が荒く、時に家畜や人に襲いかかることがあります。日本では特定動物に指定されています。古代エジプトでは、ナイルワニは宗教的な信仰の対象として敬われ、特に増水時に現れることから豊穣や永遠を象徴する神の使者として扱われたり、太陽神ラーと関連付けられたりしました。これに伴い、特にクロコディロポリスでは貴金属や宝石で飾ったワニが飼育され、死後はミイラにされることがありました。

しかし現在、ナイルワニは開発による生息環境の破壊や皮革用の乱獲、漁業による混獲などの影響で数が減少しています。そのため、多くの生息地では法律によって保護されています。特にエジプトの個体群は一度絶滅したものの、南部から再導入された個体によって生息が再開されています。

このように、ナイルワニは生態系の重要な一部を構成しつつ、その存続が危ぶまれている種でもあります。

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