クロッカス・シティ・ホール

クロッカス・シティ・ホール（ロシア語: Крокус Сити Холл）は、ロシア連邦モスクワ州クラスノゴルスキー地区に位置する、大規模なコンサートホールです。モスクワ環状道路の北西、クラスノゴルスク市近郊にあり、ロシア国内でも有数の文化・エンターテイメント施設として知られています。

このホールは、広大な複合施設「クロッカス・シティ」の一角を占めています。クロッカス・シティは、ショッピングモールであるクロッカス・シティ・モール、大規模な展示会場であるクロッカス・エキスポ、ホテル、レストランなどが集まる一大コンプレックスであり、クロッカス・シティ・ホールはその中でも中心的な役割を果たす施設の一つです。

施設の最大の特徴は、その収容力にあります。約7,500席を備えており、これは世界でも有数の規模を誇るコンサートホールです。この大規模な空間を利用して、国内外の著名なアーティストによる公演や、大規模な会議、式典などが開催されてきました。

交通アクセスとしては、モスクワ地下鉄のミャキニノ駅が最寄りとなります。この駅は、モスクワ州で初めて開業した地下鉄駅であり、同時にロシア国内で初めて民間企業によって建設・運営されたという点でも特筆されます。これにより、公共交通機関を利用したアクセスが容易になっています。

このホールは、ロシアおよびアゼルバイジャンで絶大な人気を誇った伝説的な歌手、ムスリム・マゴマエフ（Muslim Magomayev）の功績を記念して設立されました。彼の名を冠することで、音楽と文化への貢献を称えています。施設の所有者は、アラス・アガラロフ氏が率いる企業グループです。

過去には、国際的なイベントの舞台としても利用されています。例えば、2013年11月9日には、世界的に有名な美人コンテストであるミス・ユニバースの本選がここで開催され、世界中からの注目を集めました。

しかし、このホールの歴史において、2024年3月22日に発生した出来事は、未曽有の悲劇として深く刻まれることとなりました。この日、開演直前のコンサート会場で武装した集団による無差別銃乱射事件が発生し、会場にいた多数の観客が犠牲となりました。さらに、事件の過程で発生したとされる爆発や火災により、建物自体も甚大な物理的被害を受け、特に屋根が崩落するなど、施設の構造が深刻なダメージを負いました。この事件は、ロシア国内外に大きな衝撃を与え、クロッカス・シティ・ホールは悲劇の場所として認識されることとなりました。

多くの著名なアーティストやイベントが開催され、文化交流の中心地の一つとして機能してきたクロッカス・シティ・ホールですが、2024年のテロ事件によりその機能は停止し、今後の動向が注目されています。この事件は、施設の歴史における最も暗いページとなり、犠牲者の追悼とともに、安全対策の重要性が改めて認識される契機となりました。

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