クロトーネ県

クロトーネ県：歴史と自然が息づくカラブリアの宝石

イタリア共和国の南部、長靴の形をした国土のつま先にあたるカラブリア州。その東海岸、美しいイオニア海に面した中部地域に位置するのが、クロトーネ県（Provincia di Crotone）です。この県は1992年に隣接するカタンザーロ県から分離・新設された比較的新しい行政区分ですが、その歴史は古代ギリシャの植民時代にまで遡ります。県都は同名の港湾都市、クロトーネが置かれています。

地理的に見ると、クロトーネ県はカラブリア半島の東岸に広がり、その海岸線は絵画のように美しいことで知られています。内陸部にはなだらかな丘陵地帯が広がり、多様な自然景観を楽しむことができます。主要都市からの距離で見ると、州都カタンザーロからは東北東におよそ50km、コゼンツァからは東南東に約79km、さらに南イタリアの主要都市であるターラントからは南へ約155km、カラブリア州最大の都市レッジョ・ディ・カラブリアからは北東へ約168kmと、州内や周辺地域との結びつきを持ちながらも、独特の雰囲気を持つエリアです。県境は、南西側でカタンザーロ県と、北西側でコゼンツァ県と接しています。

県内の主要な自治体

クロトーネ県には、大小さまざまなコムーネ（基礎自治体）が含まれています。その中でも特に人口が多いのは、県都であるクロトーネです。2001年の国勢調査時点では、約5万人を超える人々が暮らしており、県の政治、経済、文化の中心地としての役割を担っています。港湾都市として栄え、古くからこの地域の要衝でした。

県都以外にも、イオニア海沿岸や内陸部に特色ある都市や集落が点在しています。2001年時点のデータに基づくと、人口規模でクロトーネに次ぐのは、海岸沿いのチロ・マリーナ（約1万4千人弱）や、歴史的な重要性も高いイーゾラ・ディ・カーポ・リッツート（約1万1千人弱）です。内陸に位置するクトロ（約9千人弱）、メゾラーカ（約7千人弱）、ペティーリア・ポリカストロ（約6千人強）、そしてコトロネーイ（約5千人強）なども、それぞれが地域の重要な拠点を形成しています。これらの都市は、古代からの集落や中世の城塞都市など、多様な歴史的背景を持っています。

豊かな歴史と傑出した人物たち

クロトーネ県が位置する地域は、マグナ・グラエキア（古代ギリシャの大植民地時代）において非常に重要な拠点でした。特に県都クロトーネ（古代名：クロトーン）は、紀元前6世紀に数学者・哲学者として高名なピタゴラスが移り住み、彼の名を冠したピタゴラス学派を形成・活動させた地として世界的に知られています。この学派は、数学、哲学だけでなく、天文学、音楽、医学、さらには政治や宗教にも影響を与えました。ピタゴラスは厳密には県出身ではありませんが、この地で彼の思想が開花した「ゆかりの人物」として特別な存在です。

また、この地は多くの著名な人物を輩出しています。ピタゴラス学派の流れを汲むとされる紀元前5-4世紀の数学者・哲学者フィロラオスも、一説にはクロトーンの生まれとされています。同じくクロトーン出身とされる紀元前5-6世紀のクロトンのアルクマイオンは、古代ギリシャにおける医学、特に解剖学や生理学の発展に貢献したとされる人物です。

時代が下ると、16世紀にはチロ出身の天文学者・暦学者であるアロイシウス・リリウスが活躍しました。彼は現在世界中で広く使われているグレゴリオ暦の基礎となる暦法を提案したことで知られています。また、クトロからは同時代のチェス・マスター、ジョヴァンニ・レオナルド・ディ・ボナが生まれ、その卓越した技量を示しました。さらに、イーゾラ・ディ・カーポ・リッツート近郊の生まれとされるウルチ・アリ・レイスは、オスマン帝国海軍の提督として地中海で恐れられました。現代では、クロトーネ出身のシンガーソングライター、リノ・ガエターノが20世紀イタリア音楽界に足跡を残しています。

交通とスポーツ

県内の主要な交通インフラとしては、県都クロトーネにあるクロトーネ空港が挙げられます。この空港は、国内外からのアクセスを担い、県の玄関口の一つとなっています。

スポーツの分野では、サッカーが盛んです。県都クロトーネに本拠を置くプロサッカークラブ、FCクロトーネは、かつてはイタリアプロサッカーリーグのセリエAに所属したこともありますが、2013-14シーズン時点ではセリエB（2部リーグ）で活動していました。

歴史、文化、そして美しい自然に恵まれたクロトーネ県は、カラブリア州の中でも特に古代の香りを強く残す魅力的な地域と言えるでしょう。地元で生産されるワインなど、食文化も豊かです。

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