クロトーポス

クロトーポス（古希: Κρότωπος, Krotōpos）は、古代ギリシア神話において、ペロポネソス半島の都市アルゴスの初期の王として知られる人物です。長母音を省略してクロトポスとも表記されます。その系譜については、紀行家パウサニアースの著書『ギリシア記』に詳しい記述があります。パウサニアースによると、クロトーポスはアルゴスにおけるダナオス朝以前の王統に属し、アゲーノールの息子とされています。アゲーノールは先行するアルゴス王イーアソスの兄弟にあたると伝えられており、クロトーポスはこのイーアソスの後を受けてアルゴスの王位を継いだとされています。クロトーポスにはステネラースとプサマテーという子がおり、娘プサマテーの子としてゲラノールがいました。ゲラノールも後にアルゴス王位を継ぎますが、ダナオスによって追われる運命にあります。パウサニアースはまた、自身の時代にアルゴス市内にクロトーポス王の墓が存在したことにも言及しており、古代アルゴスの人々が彼を歴史的な王として記憶していたことを示唆しています。

クロトーポスの物語において、彼の娘プサマテーを巡る悲劇的なエピソードは特に語られることが多いです。プサマテーは、神アポローンとの間にリノスという息子をもうけました。しかし、彼女は赤子リノスを捨ててしまいます。悲運にも、捨てられたリノスは、祖父であるクロトーポスの館で飼われていた家畜の番犬によって見つけられ、食い殺されてしまいました。愛する息子を失ったアポローンは激しく怒り、その怒りはリノスの死が起きたアルゴスの地全体に向けられました。アポローンは報復として、恐ろしい怪物ポイネーをアルゴスに送り込み、住民に災厄をもたらしたと伝えられています。しかし、アルゴスにはコロイボスという勇士が現れ、彼はポイネーに立ち向かい、見事に退治しました。この勇士の活躍により、アルゴスはポイネーによる脅威から解放されたとされています。この一連の物語は、神の怒りが人間に及ぼす影響と、それに対する人間の対応を描いたものとして、古代ギリシア神話の一挿話となっています。クロトーポス自身は娘のエピソードの直接的な原因ではありませんが、彼の家族と治める土地で起きた出来事として、彼の王統の記述の中で重要な位置を占めています。

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