クロマーティ伯爵

クロマーティ伯爵とは

クロマーティ伯爵（Earl of Cromartie）は、イギリスの貴族称号であり、連合王国貴族爵位です。この爵位は、マッケンジー家に対して2度創設されており、最初の創設はスコットランド貴族として、後の創設は連合王国貴族として行われました。現在存続しているのは、後者の連合王国貴族としてのクロマーティ伯爵です。1979年以降、伯爵家の当主はマッケンジー氏族の氏族長を兼ねています。一族の邸宅は、ロスシャー州ディンゴール近郊に位置するラウド城（Castle Leod）です。

歴史

第1期

マッケンジー氏族は、12世紀以降にスコットランドのロスシャー地方を拠点とした一族です。1628年、ジョン・マッケンジーがノヴァスコシア準男爵位（ロス州ターバットの準男爵）に叙されたことが、クロマーティ伯爵家の始まりです。この準男爵位は、彼の直系・傍系を問わず男子への相続が認められていました。

ジョンの息子である第2代準男爵ジョージは、スコットランド国務大臣を務めた政治家であり、1685年にスコットランド貴族としてターバット子爵とマクラウド・キャッスルヘイヴン卿に叙されました。その後、1703年にはクロマーティ伯爵に陞爵しました。初代伯の後は、その長男ジョンが爵位を相続しました。また、翌年には準男爵位を王冠に戻した上で、次男ケネスに再授与されました。

しかし、第3代伯ジョージは1745年のジャコバイト蜂起に参加したため、大逆罪で死刑を宣告されました。1748年に領地と一切の地位にかかる自己の権利を放棄する代わりに恩赦を受け、死一等を減ぜられましたが、父祖から受け継いだ全ての爵位は剥奪されました。

マッケンジー一族の所領は、第3代伯ジョージの甥にあたるケネスが相続し、彼の死後は第3代伯の娘イザベラに継承されました。イザベラの後は、彼女の娘マリア、その子ジョン、さらにその一人娘アンへと相続されました。

第2期

第3代クロマーティ伯爵の玄孫にあたるアン・ヘイ＝マッケンジーは、1849年に第3代サザーランド公爵と結婚し、3男2女を儲けました。1861年、彼女は自身の権利として、連合王国貴族爵位のクロマーティ女伯爵、クロマーティ州ターバットのターバット女子爵、クロマーティ州キャッスルヘイヴンのキャッスルヘイヴン女男爵、クロマーティ州におけるラウド城のマクラウド女男爵に叙せられました。

アンの叙爵時には、既に長男ジョージが夭折しており、次男クロマーティは夫のサザーランド公爵位の法定推定相続人でした。そのため、上記4爵位には三男フランシスとその両系男子に加えて、長女（及びその子孫）への残余権を認める特別規定が設けられました。初代女伯アンが死去すると、特別継承規定に基づいて三男フランシスが爵位を継承しました。

しかし、第2代伯フランシスは爵位を継承した翌年の1893年に死去しました。彼には2人の娘しかいなかったため姉妹間の優劣がつかず、クロマーティ伯爵位以下の全ての爵位は停止状態となりました。

1895年、姉のシーベルが第3代女伯爵に認められたため、爵位の停止は解除されました。官報『ロンドン・ガゼット』によれば、この際に伯爵位の継承条件は「3代女伯爵シーベルの両系男子」に変更・限定化されたとされています。

シーベルの長男である第4代伯ロデリックは、1979年にマッケンジー氏族の氏族長に認められました。その息子の第5代伯ジョンが現当主です。

クロマーティ伯爵家は、女系継承を認めるサザーランド伯爵位の潜在的な継承権者である一方、男系相続のみを条件とするサザーランド公爵位に関しては、相続権を保持していません。

現当主の保有爵位

現当主である第5代クロマーティ伯爵ジョン・ローリー・グラント・マッケンジーは、以下の爵位を有しています。

第5代クロマーティ伯爵 (5th Earl of Cromartie)
第5代ターバット子爵 (5th Viscount Tarbat, of Tarbat in the County of Cromarty)
第5代キャッスルヘイヴン男爵 (5th Baron Castlehaven, of Castlehaven in the County of Cromarty)
第5代マクラウド男爵 (5th Baron MacLeod, of Castle Leod in the County of Cromarty)