クロロゲン酸

クロロゲン酸とは

クロロゲン酸は、植物界に広く存在するポリフェノールの一種であり、桂皮酸誘導体（カフェ酸、フェルラ酸等）とキナ酸のエステル化合物の総称です。コーヒー生豆から初めて単離され、熱に不安定で焙煎によって容易にコーヒー酸とキナ酸に分解されます。

コーヒーとクロロゲン酸

コーヒー生豆にはクロロゲン酸類が5%–10%と、特に多く含まれています。コーヒー生豆に含まれるクロロゲン酸類は、3-カフェオイルキナ酸(3-CQA)、4-カフェオイルキナ酸(4-CQA)、5-カフェオイルキナ酸(5-CQA)、3-フェルロイルキナ酸(3-FQA)、4-フェルロイルキナ酸(4-FQA)、5-フェルロイルキナ酸(5-FQA)、ジカフェオイルキナ酸(di-CQA)などの化合物で構成されています。これらの成分は、カフェインとともにコーヒー抽出液冷却時に認められる白濁の原因となります。コーヒー抽出液の味覚に複雑な影響を与え、濃度やその他の条件によって渋味、酸味、甘味を示すことがあります。また、抽出時間が長すぎると雑味の原因となることもあります。

鉄(III) イオンの存在下では緑がかった黒色の化合物となり、アルカリ条件下では橙色を呈します。ラジカル捕捉能を持つため、抗酸化作用が期待されています。

生理作用

試験管内実験や動物実験では、血糖値上昇抑制効果が認められていますが、人を対象とした信頼性の高い研究では、まだ有効性は確認されていません。また、辛味を抑える作用があることも知られています。

食薬区分

クロロゲン酸は、食薬区分において「専ら医薬品として使用される成分本質 (原材料)」にも「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料)」（非医薬品）にも該当しません。そのため、医薬品的な効能効果を表示することはできません。ただし、コーヒーのように『明らか食品（医薬品に該当しないことが明らかに認識される食品）』であれば、効能を表示しても薬機法（旧薬事法）には違反しません。しかし、「癌が治る」「血糖値が下がる」「血液を浄化する」といった誇大な医薬品的効果効能表示（店頭や説明会における口頭での説明も含む）を行うと、景品表示法や健康増進法の規制の対象となります。

特定保健用食品・機能性表示食品

コーヒーから抽出したクロロゲン酸類（5-カフェオイルキナ酸として）を関与成分とし、「体脂肪が気になる方に適する」「血圧が高めの方に適する」という保健用途の表示ができる特定保健用食品が許可されています。また、コーヒー、ボタンボウフウ、ゴボウから抽出したクロロゲン酸を関与成分とした健康食品が、機能性表示食品として届けられています。機能性表示食品とは、国が審査は行わず、事業者が自らの責任において機能性の表示を行うもので、「体脂肪が気になる方に適する」「肌の水分量を高め、乾燥を緩和する機能があることが報告されている」「食後の血糖値上昇を緩やかにする機能が報告されている」などの表示をしています。ただし、機能性表示食品に関しては、利益相反によるバイアスの可能性などが指摘されています。

安全性

サプリメントなど濃縮物として摂取する場合の安全性に関しては、信頼できる十分な情報は見当たりません。特に妊婦・授乳婦、小児は自己判断でのサプリメントの摂取は控えることが推奨されます。

物性

クロロゲン酸は水に可溶で、アルコールやアセトンに易溶です。渋味を持ち、低濃度では酸味として感じられます。また、水に甘味を与える味覚修飾物質としての性質も持っていますが、その作用は比較的弱いものです。

異性体

ネオクロロゲン酸 - プルーンに含まれる代表的なフェノール酸。

関連項目

クロロゲン酸ヒドロラーゼ
チコリー
ゴボウ
たんぽぽコーヒー
4-カフェオイル-1,5-キニド - クロロゲン酸ラクトンの一種

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