チコリー

チコリー：多様な顔を持つ野菜の魅力

チコリー（学名：Cichorium intybus）は、キク科の多年生植物で、ヨーロッパを原産とします。一般的に青い花を咲かせますが、まれに白やピンクの花もみられます。和名ではキクニガナ（菊苦菜）と呼ばれ、その名の通り葉に苦味があるのが特徴です。チコリーは、サラダ菜、軟白栽培されたシコン、根など、様々な形で利用されており、コーヒーの代用品や食品添加物としても活躍しています。

チコリーの概要

チコリーは、明るい青色の花を咲かせる多年草で、多くの品種がサラダやシコンとして栽培されています。根は、焼いたり挽いたりしてコーヒーの代用品や食品添加物として利用されています。近年では、チコリーの根から抽出されるイヌリンが、甘味料や食物繊維源として注目されています。また、家畜の飼料としても重要な役割を担っています。

チコリーの原産地は、ヨーロッパ・地中海沿岸から中央アジアにかけての地域とされています。道端に自生する野生種も見られ、現在では北米、中国、オーストラリアなどにも広く帰化しています。「チコリー」という名前は、アメリカでは同属の一年草であるエンダイブの一般名としても使われるため、混同されることもあります。フランス語ではアンディーブ、イタリア語ではチコリアなど、地域によって異なる呼び名があります。

日本では軟白栽培されたものが「チコリ」として流通しており、フランス語でアンディーブと呼ばれることもあります。特に赤い品種群は、イタリアではラディッキオ・ロッソ、日本では主にトレビスと呼ばれています。市場では、エンダイブとの名前の混乱や認識の齟齬が見られるため、注意が必要です。

チコリーの形態・生態

チコリーは、1.5メートルほどの高さになる丈夫な茎を持ち、葉は細長い披針形、倒披針形、または広長楕円形です。葉には不正鋸歯があり、中心に太い主脈が目立ちます。開花期は7月から10月で、青紫色または白色の花を咲かせます。花は朝に開き、昼過ぎには萎んでしまいます。地下には直根または側根を生じ、根の発達は旺盛です。

チコリーの歴史

チコリーの栽培は、およそ4000年前からエジプトで利用されていたという説があり、古代ギリシア時代にはその名が記録されています。古代ローマでは、チコリーの新芽を使った料理があったとされています。17世紀には、栽培植物として初めて記述され、ヨーロッパ諸国によるアメリカ大陸の植民地化の際に北アメリカにも持ち込まれました。

18世紀には、プロイセン国王がコーヒーの輸入を禁止したため、チコリーがコーヒーの代用品として利用されるようになりました。19世紀には、ベルギーで軟白栽培の技術が開発され、現在の食用チコリーの栽培につながっています。日本では、明治初年に導入されましたが、近年イタリア料理やフランス料理の普及に伴い、サラダの材料として注目されるようになりました。

チコリーの種類

チコリーは、大きく分けて以下の3つのタイプに分類されます。

リーフチコリー：主に葉を食用とする品種群で、ラディッキオ、ベルギー産エンダイブ（ウィットルーフ）、カタローニャチコリーなどがあります。
ベルギー産エンダイブ（チコリ）：軟白栽培された芽を食用とするチコリーで、日本では「チコリ」、フランスでは「アンディーブ」と呼ばれます。
ラディッキオ（トレビス）：赤色または赤と緑色の葉を持つリーフチコリーの品種群で、日本では「トレビス」として知られています。

リーフチコリー

リーフチコリーは、主に葉を食用とする品種群で、しばしば英語で「エンダイブ」と呼ばれます。ただし、本来のエンダイブとは別種です。

ラディッキオ（トレビス）

ラディッキオは、赤色または赤と緑色の葉を持つ品種群で、日本ではトレビスとして流通しています。苦味と辛味がありますが、焼いたり炒めるとまろやかになります。イタリアでは、トレヴィーゾ、ヴェローナ、キオッジャなど、様々な産地で栽培されています。

ラディッキオ・ロッソ：アントシアニンが含まれており、赤紫色の葉が特徴です。
プレコーチェ：イタリア産の早生種で、葉がやや幅広く半結球の形をしています。
トレヴィーゾ・タルディーヴォ：イタリア産の晩生種で、葉が細長く、苦味が強いのが特徴です。
キオッジャ：葉が丸く結球し、苦味が少ない品種です。
ヴェローナ：葉が面長で、結球したプレコーチェとキオッジャの中間の品種です。
カステルフランコ：クリーム色の葉に赤紫色の斑が入る、バラのような見た目が特徴です。

ベルギー産エンダイブ（チコリ）

ベルギーのエンダイブは、軟白栽培された芽を食用とするチコリーです。日本ではチコリやベルギーチコリと呼ばれ、フランスではアンディーブと呼ばれます。クリーム色の葉が特徴で、苦味がわずかにあります。軟白栽培によって、葉が緑色になるのを防いでいます。主な産地はフランスです。

F1ポルシエ：フランスで人気のウィットルーフタイプの品種で、土寄せをしなくても砲弾型になります。
ズッチェロ：ベルハートタイプの品種で、結球ハクサイを小さくしたような形をしています。

カタローニャチコリー

カタローニャチコリーは、花が咲く前の茎をプンタレッラとして利用する品種です。葉縁の欠刻が深く、細くて立性の生育をします。イタリアでは、サラダとして広く利用されています。北ヨーロッパが原産で、スペインのカタルーニャ州が名前の由来とされています。

野生のチコリ

野生のチコリは、葉を生で食べることができますが、通常は苦味が強いです。イタリアやインドなどでは、特定の料理で利用されています。リグーリア地方では「プレボジオン」の材料となり、アプリア地方では「ファベ・エ・チコリエ・セルヴァティケ」として食されています。

ルートチコリ

ルートチコリは、根を焼いたり挽いたりして、コーヒーの代用品として利用される品種です。地中海地方では、コーヒーの添加物として使われています。ビールメーカーの中には、焙煎したチコリ根をスタウトの風味付けに利用するところもあります。

チコリーの栽培

一般的に流通しているチコリーは、軟白栽培されたもので、茎は白く、葉先がわずかに黄色くなっています。日本では、サラダコスモなどの企業が栽培に取り組んでいます。軟白栽培では、まず充実した根株を養生し、その後、暗所で新芽を育てます。レッドチコリー（トレビス）の栽培は、玉レタスとほぼ同様です。連作障害を防ぐため、同じ土地での栽培は1年から2年空ける必要があります。

チコリーの利用

軟白栽培のチコリは、サラダの他、蒸し煮、グラタン、ソテーなど様々な料理に使われます。トレビスは、サラダの彩りやソテー、グリルなどによく合います。根は、コーヒーの風味付けや代用品として利用されます。また、チコリーは、ハーブとしても用いられています。

チコリーの栄養素

チコリーの生葉は、水分、炭水化物、タンパク質を含み、ビタミンK、ビタミンA、ビタミンC、一部のビタミンB群、マンガンを豊富に含んでいます。トレビス（ラディッキオ）には、カロテン、ビタミン、カリウムなどが含まれています。赤色の色素はアントシアニンで、抗酸化作用が期待できます。また、チコリーの根に含まれるイヌリンは、甘味料やプレバイオティクスとして利用されています。

チコリーの苦味の原因

チコリーの苦味は、主にラクチュシンとラクチュコピクリンというセスキテルペンラクトンによるものです。苦味成分のチコリ酸には、抗菌作用や消化促進作用があるといわれています。

チコリーの根とイヌリン

チコリーの根には、イヌリンが最大20%含まれています。イヌリンは、甘味料やプレバイオティクスとして食品業界で利用されています。

チコリーの伝統療法

チコリーは、バッチフラワー療法のレメディの一つとしても知られています。

チコリーの飼料としての利用

チコリーは、反芻動物にとって消化性が高く、繊維濃度が低い飼料となります。また、タンパク質と脂質を豊富に含み、タンニンが腸内寄生虫を減少させる効果も期待されています。飼料用チコリーの品種としては、「プナ」「フォレージ・フィースト」「チョイス」「オアシス」などがあります。

脚注

注釈

出典

参考文献

猪股慶子監修成美堂出版編集部編『かしこく選ぶ・おいしく食べる野菜まるごと事典』成美堂出版、2012年7月10日、32頁。
講談社編『旬の食材：秋・冬の野菜』講談社、2004年。
講談社編『からだにやさしい旬の食材野菜の本』講談社、2013年5月13日、216 - 217頁。
主婦の友社編『野菜まるごと大図鑑』主婦の友社、2011年2月20日、237頁。
農文協編『野菜園芸大百科第2版 20：特産野菜70種』農山漁村文化協会、2004年3月31日、227 - 229頁。
藤田智監修 NHK出版編『NHK趣味の園芸やさいの時間藤田智の新・野菜づくり大全』NHK出版〈生活実用シリーズ〉、2019年3月20日、176頁。

関連項目

チコリータ（この野菜をモデルに作られたポケモンの1種）
岐阜県中津川市（栽培が盛んで「ちこり村」という生産工場・直売施設がある）
リーフチコリー（同じキクニガナ属の野菜）

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