クローネ

クローネとは

クローネ（krone）は、主に北欧および中欧諸国で使用されている通貨の名称です。ドイツ語、デンマーク語、ノルウェー語では「王冠」を意味し、英語のクラウン（crown）やラテン語のコロナ（corona）に相当します。この名称は、王冠をモチーフとしたデザインが通貨に用いられていたことに由来すると考えられます。

各国での名称の違い

クローネは、各言語において異なる発音や綴りで呼ばれることがあります。例えば、スウェーデン語では「クローナ（krona）」、チェコ語やスロバキア語では「コルナ（koruna）」、エストニア語では「クローン（kroon）」、ハンガリー語やポーランド語では「コロナ（korona）」などです。

これらの名称は、それぞれの言語で「王冠」を意味する言葉に由来しており、クローネと共通の語源を持つものが多いです。しかし、これらの名称を区別せずに、ドイツ語では「クローネ」、スウェーデン語では「クローナ」と自国語の名称で呼ぶのが一般的です。

歴史

クローネが初めて公式の通貨として導入されたのは、1873年にデンマークとスウェーデンが締結したスカンディナヴィア[[通貨同盟]]によるものです。この同盟は、金本位制に基づく統一通貨としてクローネ（スウェーデンではクローナ）を採用しました。1875年にはノルウェーも同盟に加盟しました。

当時の金平価は純金1グラム＝2.48クローネと定められ、各国のそれまでの通貨との交換レートも設定されました。しかし、第一次世界大戦勃発後の1914年、スウェーデンが金本位制を放棄したことで、スカンディナヴィア[[通貨同盟]]は解体され、各国は独自のクローネを運用することになりました。

スカンディナヴィア以外では、オーストリア＝[[ハンガリー帝国]]が1892年にクローネを導入しました。これはスカンディナヴィアのクローネとは別のものですが、帝国の解体後に誕生した複数の独立国でも、クローネに相当する名称が通貨として採用されました。

各地のクローネ

現在、クローネは以下の国々で使用されています。

アイスランド・クローナ：アイスランド
スウェーデン・クローナ：スウェーデン
チェコ・コルナ：チェコ
デンマーク・クローネ：デンマーク
ノルウェー・クローネ：ノルウェー
フェロー・クローナ：デンマーク領フェロー諸島

過去には、以下の国や地域でもクローネが使用されていました。

エストニア・クローン：エストニア（1928-1940, 1992-2010）
オーストリア・クローネ：オーストリア（1922-1924）
オーストリア＝[[ハンガリー・クローネ]]：オーストリア＝ハンガリー（1892-1918）
スカンジナビア通貨同盟のクローネ：デンマーク、スウェーデン、ノルウェー（1873-1914）
スロバキア・コルナ：スロバキア（1993-2008）
チェコスロバキア・コルナ：チェコスロバキア（1919-1939, 1945-1993）
ハンガリー・コロナ：ハンガリー（1919-1925）
ベーメン・メーレン・コルナ：ドイツ領ベーメン・メーレン保護領（1939-1945）
ユーゴスラビア・クルナ：ユーゴスラビア（1918-1922）
リヒテンシュタイン・クローネ：リヒテンシュタイン（1898 - 1921）

現在では廃止されていますが、これらのクローネは、その地域の歴史や経済状況を反映する重要な要素です。

補助通貨

クローネには、通常、1/100の価値を持つ補助通貨が存在します。これらの補助通貨の名称は、いくつかのグループに分けることができます。

1. エーレ（øre）など
1アイスランド・クローナ = 100 eyrir
1スウェーデン・クローナ = 100 エーレ
1デンマーク・クローネ = 100 エーレ
1ノルウェー・クローネ = 100 エーレ
1フェロー・クローナ = 100 oyra

2. ヘラー（Heller）など
1オーストリア・クローネ = 100 ヘラー
1オーストリア＝[[ハンガリー・クローネ]] = 100 ヘラー / 100 フィレール
1スロバキア・コルナ = 100 halier
1チェコ・コルナ = 100 haléř
1チェコスロバキア・コルナ = 100 haléř / 100 halier
1ベーメン・メーレン・コルナ = 100 haléř
1ハンガリー・コロナ = 100 fillér

3. セント（sent）
* 1エストニア・クローン = 100 セント

これらの補助通貨は、クローネが使用される地域においても、それぞれのグループ内で名称が区別されます。例えば、ドイツ語ではエーレとヘラーは異なる名称で呼ばれます。

エーレはラテン語の「金（aurum）」に由来し、ヘラーは中世に南ドイツのシュヴェービッシュ・ハルで鋳造されたヘラー硬貨が語源です。ハンガリーのフィレールは、少額貨幣として多用された4クロイツァー硬貨から、ドイツ語の「4（vier）」に由来します。

クローネは、その歴史と多様性を通して、ヨーロッパの通貨史において重要な位置を占めています。それぞれの国や地域で異なる名称を持ちながらも、その根底には「王冠」という共通のイメージが存在します。

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