クワトロ (四輪駆動システム)

アウディクワトロ：四輪駆動システムの進化

アウディの「クワトロ (quattro)」は、[イタリア語]]で「4」を意味する言葉であり、同社の全輪駆動]システムの代名詞として広く知られています。1980年、[[アウディ・クワトロモデルに初めて搭載されて以来、アウディのAWDモデルの多くに採用され、その高い走行性能と安定性で多くのドライバーを魅了してきました。本稿では、クワトロシステムの歴史、技術的な詳細、そしてフォルクスワーゲン・グループ内における他の4WDシステムとの違いについて解説します。

縦置きエンジン搭載モデル

第1世代：オープンデフと手動ロック

初期のクワトロシステムは、縦置きエンジンとトランスミッションを搭載。機械式センターデフは前後の車軸にトルクを分配し、常時四輪駆動を実現していました。特徴的なのは、センターデフとリアデフを手動でロックできる機構を備えていた点です。これは、悪路での走破性を高めるための措置でしたが、ロック時はABSが機能しなくなるという制限がありました。

第2世代：トルセンデフの導入

1987年以降のモデルでは、手動ロック式デフに代わり、トルセン(トルクセンシング)T1型センターデフを採用。これは、路面状況に応じてトルクを前後の車軸に自動的に配分する機構で、ドライバーの操作を必要とせずに最適なトラクションを確保することが可能となりました。前後50:50のトルク配分を基本としながら、最大75％を一方の車軸に配分できます。リアデフは引き続き手動ロック式でしたが、速度25km/hを超えると自動的に解除される安全機構が追加されました。

第3世代：遊星歯車機構とトルセンデフの併用

V8エンジン搭載車では、トランスミッションが自動か手動かによってシステム構成が異なりました。自動トランスミッション車は電子制御多板クラッチ付きの遊星歯車センターデフを採用。手動トランスミッション車では、トルセンT1センターデフとトルセンT1リアデフの組み合わせが用いられました。

第4世代：電子デフロック(EDL)の導入

この世代では、手動ロック式リアデフに代わり、電子デフロック(EDL)が導入されました。EDLは、ABSの車輪速センサを利用して空転している車輪にブレーキをかけ、トルクをトラクションのある車輪に伝達するシステムです。最大80km/hまで機能し、悪路での走破性向上に貢献しました。トルセンT1センターデフは継続して使用されました。

第5世代：トルセンT3(C型)センターデフとトルクベクタリング

2006年以降のモデルでは、トルセンT3(C型)センターデフを採用。これは、遊星歯車機構を用いることで、前後40:60の非対称なトルク配分を実現しました。また、オプションで後車軸にスポーツディファレンシャルを装備することで、左右の車輪間にもトルク配分を行う「トルクベクタリング」が可能となり、さらに高い走行性能を実現しました。

第6世代：冠歯車デフ

2015年以降のモデルでは、トルセンデフに代わって「冠歯車」デフを採用。これは、よりダイレクトで効率的なトルク配分を可能にし、最大70%を前輪、最大85%を後輪に配分できます。このシステムにより、あらゆる路面状況で車両の挙動を正確に制御することが可能になりました。

横置きエンジン搭載モデル

横置きエンジン搭載モデルでは、クワトロシステムとは異なる4WDシステムが採用されています。初期のモデルではビスカスカップリングが用いられましたが、その後、ハルデックス・トラクション社の電子油圧式リミテッドスリップクラッチに取って代わられました。ハルデックスシステムは、燃費向上や車室空間の拡大に貢献しましたが、トルセン式システムと比較すると、反応速度やハンドリング特性に若干の違いがあります。

フォルクスワーゲン・グループ内での4WDシステム

フォルクスワーゲン・グループ内では、アウディ以外も4WDシステムを採用しています。フォルクスワーゲンは「4motion」、シュコダは「4x4」、セアトは「4」または「4Drive」といった名称を用いていますが、それぞれのシステムの動作や種類は異なります。

まとめ

アウディのクワトロシステムは、長年にわたる技術開発によって、常に進化を遂げてきました。初代モデルから最新モデルまで、その高い走行性能と安定性は、アウディ車の魅力の1つとなっています。各世代の技術的な特徴を理解することで、アウディ車の性能をより深く知ることができます。 また、フォルクスワーゲン・グループ内の他の4WDシステムとの比較を通して、それぞれのシステムの特性を理解することも重要です。それぞれのシステムは、搭載車種や用途に応じて最適化されているため、一概に優劣をつけることはできません。

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