縦置きエンジン

縦置きエンジンの概要

自動車工学における縦置きエンジンは、エンジンのクランクシャフトが車両の前後方向に沿うように配置されている内燃機関を指します。この配置方式は、特に大型エンジンを搭載する四輪自動車で一般的で、例えば、直列6気筒やV型8気筒といったエンジンに適しています。欧米では「north-south engine」とも表現され、進行方向を北方向に設定した際のエンジンの向きを指しています。

縦置きエンジンの特性

通常、縦置きエンジンはフロントエンジン・後輪駆動（FR）のレイアウトの自動車で採用されることが多いです。この配置では、プロペラシャフトと組み合わせて使用され、パワートレインの効率を最大化することが可能です。例えば、トラックや高出力車両などにおいて、この配置は特に重要です。一方で、リアエンジン（RR）やミッドシップ（MR）のレイアウトでは、エンジンを横置きにすることが一般的です。これは、エンジンの大きさや空間的な制約から、よりコンパクトにまとめる必要があるためです。

フロントエンジン・前輪駆動（FF）の車両においては、横置きエンジンが主流ですが、特定のメーカーや車種では縦置きにするケースも存在します。例えば、アウディやサーブ、または日本のスバルやホンダ車などが該当します。縦置きにすることにより、左右のドライブトレインの長さが均等になり、トルクステアの影響を軽減することができるため、走行性能が向上することがあります。ただし、縦置きエンジンは空間を多く必要とするため、居住空間に制約が生じることがあります。

縦置きエンジンの利点

縦置きエンジンを搭載した車両は、一般的に最小回転半径が横置き式よりも小さくなります。これは、エンジンの配置によってタイヤの切れ角が大きく確保できるためであり、この特性は特に小回りが求められる状況において有利です。

縦置きエンジンを搭載したFF車の例

以下は、縦置きエンジンを採用しているFF車の一部です：

• - アウディ・A4
• - サーブ・900
• - スバル・インプレッサ
• - ホンダ・ビガー
• - アキュラ・RL
• - トヨタ・ターセル
• - トヨタ・コルサ
• - トヨタ・カローラII
• - マツダ・ルーチェロータリークーペ
• - NSU・Ro80

オートバイにおける縦置きエンジン

オートバイでは、エンジンの配置は駆動方式に依存します。チェーンやベルトドライブのシステムでは、横置きエンジンが用いられる一方で、シャフトドライブの場合は縦置きエンジンが使われることが一般的です。

オートバイにおいて縦置きエンジンは「トルクリアクション」という特性を持ちます。これは加速時において、ジャイロ効果が発生し、車体が傾く現象です。この問題は、特定の機構を調整することで部分的に解消可能ですが、時にはこれが縦置きの魅力と捉える一部の好事家もいます。また、オートバイでは差動機構が不要なため、クランクシャフトの回転方向を変える際にはかさ歯車を用いることがあるのも特徴的です。

縦置きエンジンの種類

縦置きエンジンには多様な種類があり、主に以下のような構成が存在します：

• - 直列エンジン：2気筒から8気筒までの各種。
• - V型エンジン：V2からV16までのバリエーション。
• - 水平対向エンジン：フラット2、フラット4、フラット6など。
• - W型エンジン：独自の形式として存在する。

このように縦置きエンジンは、自動車やオートバイにおける動力の効率的な配置方式として重要な役割を果たしています。

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