クーデター合理論

クーデター合理論

クーデター合理論とは、日本の右翼・民族派における特異な政治思想を指し、特に小島玄之と呼ばれる思想家によって1960年に提唱されました。この理論は、当時の政治状況や社会情勢を背景に生まれたものであり、特に1960年11月に発生した全学連による国会乱入事件がきっかけとなっています。小島は自衛隊によるクーデターの可能性について考察し、彼の著作である『思想研究』の創刊号にその考えを発表しました。

クーデター合理論の核心は、現在の政治体制が引き起こす様々な害悪に対して、クーデターが持つ「悪」の影響は比較的小さいとする考え方です。具体的には、国家や政治の腐敗した状態を一掃するため、政治家を強制的に排除する手段としてクーデターを支持するという立場をとっています。クーデターの際には、多少の犠牲者が発生することもあり得るが、それは社会全体の利益を考えた際には受け入れられるべきだとしています。

この理論の影響を受けた事件として、1961年の池田内閣に対する政府要人暗殺計画「三無事件」が挙げられます。この事件では、川南豊作らが小島の思想に触発された行動を起こし、具体的な実行に移しました。このように、クーデター合理論は一部の過激派にとって、実際の行動指針として機能していた側面があります。

小島玄之の生涯

小島玄之（1908年生まれ - 1966年没）は、岐阜県で陸軍大佐の子として育ちました。彼は早稲田大学専門部に通いながら左翼運動に積極的に参加し、右翼学生たちとの対立を経て退学に追い込まれました。その後、共産主義青年同盟に加入し、さらには中部民衆党での活動を通じて政治的な足場を固めましたが、治安維持法違反での検挙をきっかけに国家主義へと転向します。

彼は1938年頃より、思想転向者からなる団体を設立し、以後は右翼団体の一翼を担うようになります。1943年には、戦時中の多くの運動への参加が厳しくなり、検挙されるなど困難な時期を迎えることとなりました。しかし戦後も活動を続け、1951年に新政治力結集協議会を立ち上げ、1959年には思想研究所を設立するまでに至ります。

彼の政治活動は、単に思想的な理念を追求するだけでなく、実際に政界への影響を与えることも目的としていたため、彼の著作には明確な実践的要素が込められています。特に『クーデターの必然性と可能性』は、彼の思想を凝縮した重要な著作の一つです。

まとめ

クーデター合理論は、クーデターを正当化するための論理構築を目的としたものであり、これに基づく実践は、政治的自由や民主主義に対する重大な侵害をもたらす可能性を秘めています。その一方で、日本の右翼思想において特異な位置を占め、今なお議論の余地を残すテーマでもあります。

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