転向

転向とは

転向（てんこう）は、これまでの思想や進路、職業、好みなどを大きく変えることを指し、特に思想や政治的主張の変更に注目が集まります。特に、弾圧の中で共産主義や社会主義の立場を放棄することが頻繁に語られる点が重要です。転向に関連する用語として「変節」（へんせつ）がありますが、これは守ってきた信念を裏切ることを指し、批判的なニュアンスを含みます。

語源と歴史

転向の起源は近世の宗教的改宗にさかのぼります。キリシタンから仏教や神道に改宗させられた例では、棄教したキリシタンを「転びキリシタン」と呼んでいました。また、戦前の日本では、特別高等警察などが過激思想を捨てさせるために様々な手段を用いたため、心理的に転向を促すための理論が形成されました。戦後、思想や良心の自由が確立されると、転向は軽蔑的に使われる傾向にあります。

日本における転向の事例

日本の歴史においては、日蓮やハビアンのように、宗教的な転向が明確に見られます。幕末に活躍した倒幕の指導者たちは、政権を握ると一転して欧化政策を進めるなど、思想の大きな変化が見受けられました。特に、加藤弘之や徳富蘇峰のような思想家の事例は、日本思想史を考える上での興味深い点です。

世界史における転向

古代ローマでも共和派から帝政派に転向した人々がいました。ナポレオン・ボナパルトは、元々は革命運動の支持者でしたが、帝政に転じました。さらに、宗教改革を行ったマルティン・ルターが一度はユダヤ人を擁護したにもかかわらず、次第に反ユダヤ主義に走るなど、転向は歴史を通じた普遍的なテーマです。

日本における社会主義・共産主義からの転向

日本共産党の設立後、社会主義思想が盛んになる一方で、厳しい弾圧が続きました。特に1928年の三・一五事件では、日本共産党員が次々と検挙され、転向者が現れました。特に獄中転向を行った人物たちは、政府の方針を支持する声明を出し、社会復帰に成功しました。このような背景の中で、転向者が新たな職を得るために多くの条件を提示されることが多く、社会復帰を後押しされる状況も見られました。

転向文学

文学界においては、転向問題をテーマにした作品が多く存在します。村山知義の『白夜』や中野重治の『村の家』などがその一例ですが、これらの作品は転向者の苦悩や精神的葛藤を描いています。

現代における転向

冷戦期以降も多くの政治家や思想家が転向を経験しました。社会主義者から保守的立場に転じた例や、逆に右派から左派へ転向したケースもあります。こうした事例は特に近年の日本において顕著で、転向の現象は依然として続いています。

このように、転向は日本国内外における思想的な潮流を理解するための重要な概念であると言えるでしょう。

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