グアヤナエセキバ

グアヤナ・エセキバ（エセキボ地域）とは

グアヤナ・エセキバ、またはエセキボ地域は、ガイアナ西部に位置し、エセキボ川以西の15万9500平方キロメートルに及ぶ地域を指します。この地域は、ガイアナが実効支配していますが、隣国のベネズエラがその領有権を強く主張しており、両国間の長年の懸案事項となっています。

紛争の背景

この領土問題の根源は、かつての植民地時代に遡ります。スペインとオランダ、そしてイギリスといった列強がこの地域を巡って争い、1899年にはパリ仲裁裁判所が、当時のイギリス領ギアナ（現在のガイアナ）の領土として認めました。ガイアナは独立後もこの裁定を最終的なものとしていますが、ベネズエラは仲裁に不正があったとして、その結果を認めていません。

1966年のガイアナ独立は問題をさらに複雑化させました。独立直前の同年2月17日、イギリス、ベネズエラ、そしてイギリス領ギアナの三者間でジュネーブ協定が締結され、当事者が平和的かつ満足のいく解決策を見つけることで合意しました。

しかし、ベネズエラはその後、外交的、経済的な手段に加え、軍事的な圧力をかけ続けています。ガイアナがこの地域の開発を進めようとすると、それを支持する国々に対し経済制裁をほのめかすなど、強硬な姿勢を示してきました。2015年には、ガイアナ沖でエクソンモービルが大規模な油田を発見し、周辺地域でも油田が相次いで確認されたことで、状況はさらに悪化しました。この油田発見により、ガイアナは2023年に38％という驚異的な経済成長率を記録すると予測され、経済的な利害が絡み合い、ベネズエラの態度は一層硬化しました。

2023年の危機

2023年12月3日、ベネズエラは、1899年の仲裁協定の拒否や、当該地域を最終的に自国領とするか否かなどを問う国民投票を実施しました。これに対し、ガイアナは国際司法裁判所 (ICJ) に投票の差し止めを要請。ICJはベネズエラに対し、係争地の現状を変更するような行動を控えるよう指示しました。しかし、国民投票は強行され、95％がエセキボ地域の領有を支持する結果となりました。

これを受け、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は、エセキボ地域を「グアヤナ・エセキバ州」として新たに創設するよう指示し、地域住民へのベネズエラ国籍付与、新州の行政官任命、新地図の作成と配布などを発表しました。また、同地域における石油事業を管理する部門を国営石油企業PDVSAに設置するよう命じました。

12月14日には、セントビンセント・グレナディーンでガイアナとベネズエラの首脳会談が開催され、両国は武力行使を避け、平和的な解決を目指すことで合意しました。紛争解決のための合同委員会も設置される予定ですが、ICJの管轄権を巡る両国の立場は依然として平行線をたどっており、ベネズエラが布告した法令等も撤回されていません。

2024年4月3日には、マドゥロ大統領が、アメリカ南方軍とCIAがエセキボ地域に秘密軍事基地を建設したという情報を主張。エセキボ地域を併合する法案に署名し、成立させました。これに対し、ガイアナ政府は国際法違反であるとして強く反発しています。

行政区分

現在、当該地域はガイアナの法律に基づき、以下の6つの行政区に区分されています。

バリマ＝ワイニ州
ポメローン＝スペナーム州
エセキボ諸島＝西デメララ州
クユニ＝マザルニ州
ポタロ＝シパルニ州
アッパー・タクトゥ＝アッパー・エセキボ州

ただし、エセキボ諸島＝西デメララ州、ポタロ＝シパルニ州、アッパー・タクトゥ＝アッパー・エセキボ州の一部はエセキボ川以東に位置するため、ベネズエラが主張するグアヤナ・エセキバとは完全には一致しません。

ベネズエラは、自国領と主張するこの地域を地図上で「グアヤナ・エセキバ」として線で囲み、斜線を引いて「回復すべき地帯」と表記しています。

今後の展望

グアヤナ・エセキバを巡る紛争は、両国間の外交関係だけでなく、地域の安定にも影響を与える可能性があります。ICJでの裁判や、両国間の対話を通じて、平和的な解決が図られることが望まれます。

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