グアンダ・チャクアンバ

グワンダ・チャクアンバ：マラウイ政治の変遷と「カメレオン民主主義」

グワンダ・チャクアンバ（1934年4月4日 - 2016年10月24日）は、2009年に政界を引退するまで、マラウイの政治において重要な役割を果たした人物です。彼は、その時々の状況に応じて所属政党や主張を大きく変える政治姿勢から、「カメレオン民主主義」の代表的な人物として知られています。これは、権力への接近と獲得を最優先とし、過去の対立や信条よりも、状況に合わせて柔軟に立場を変えるマラウイの政治家特有の傾向を指します。

独立からバンダ大統領引退まで

1964年、マラウイはイギリスから独立を果たしました。チャクアンバは独立直後から、唯一の合法政党であったマラウイ会議党（MCP）の主要メンバーとして活動しました。ヘイスティングズ・カムズ・バンダ大統領の統治下で、彼は様々な閣僚を歴任し、党の青年組織であるYoung Pioneersの司令官も務めました。しかし、1980年に扇動罪で逮捕され、22年の懲役刑を受けました。

1993年7月に釈放されたチャクアンバは、その直後に行われた国民投票で多党制導入を支持しました。いったんは統一民主戦線（UDF）に所属しましたが、すぐにマラウイ会議党に復帰し、事務総長に就任。1994年の大統領選挙では、バンダ大統領の副大統領候補として指名されました。

1994年5月に行われた初の複数政党制選挙では、統一民主戦線のバキリ・ムルジが現職のバンダを破り、大統領に就任。バンダは1994年8月に政界を引退し、チャクアンバがマラウイ会議党のリーダーとなりました。

ムルジ大統領時代

1999年2月、マラウイ会議党は民主同盟（AFORD）との選挙協力を発表。チャクアンバは、選挙協力の見返りとして、民主同盟の党首であるチャクフワ・チハナを副大統領候補に指名しました。しかし、この決定は党内の有力メンバーであったジョン・テンボらを軽視したとみなされ、党内に深刻な亀裂を生じさせました。

1999年6月の大統領選挙では、ムルジが再選を果たし、チャクアンバは約45%の得票率で敗北しました。マラウイ会議党と民主同盟は選挙結果に異議を申し立てましたが、裁判所はこれを棄却しました。

2002年10月、チャクアンバは、ムルジが大統領3期目を目指すための憲法改正に協力した議員に賄賂を支払ったとする手紙を偽造した容疑で逮捕されました。

ムタリカ政権下

2004年の総選挙を前に、チャクアンバはマラウイ会議党を離党し、共和党（RP）を設立。野党連合のムグウイリザノ連合に参加し、大統領候補として出馬しました。しかし、選挙では統一民主戦線のビング・ワ・ムタリカが当選し、チャクアンバは3位に終わりました。

選挙後、チャクアンバは自身が大統領選挙に勝利したと主張しましたが、ムタリカの就任式後には選挙結果への異議申し立てを諦め、ムタリカ政権への協力を表明しました。2005年2月には農林水産大臣に就任しましたが、ムタリカが統一民主戦線を離党して民主進歩党（DPP）を結成すると、チャクアンバも共和党を離れ、民主進歩党に参加しました。しかし、同年9月に大臣を解任され、その後逮捕されるなど、政権との関係は悪化しました。

その後、チャクアンバは民主進歩党を離党し、新共和党を結成。2007年にムタリカ大統領の妻が死去した際には、大統領の対応を批判しました。

選挙の敗北と引退

2009年の選挙では、統一民主戦線から出馬しようとしましたが、最終的には民主進歩党のムタリカ支持に転じました。自身も新共和党の議員候補として出馬しましたが落選。新共和党が1議席も獲得できなかったことを受け、政界引退を表明し、魚の養殖事業に転身しました。

チャクアンバの政治キャリアは、その変幻自在な姿勢から多くの批判を受けましたが、マラウイの民主化の過程における政治的駆け引きを象徴するものでもありました。彼の引退は、マラウイ政治の一つの時代の終わりを告げるものでした。

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