ビング・ワ・ムタリカ

ビング・ワ・ムタリカ：マラウイの経済学者・政治家

ビング・ワ・ムタリカ（Bingu wa Mutharika, 1934年2月24日 - 2012年4月5日）は、マラウイの経済学者、政治家であり、2004年から2012年まで同国の大統領を務めました。また、2010年にはアフリカ連合の議長も務めました。

生い立ちと初期の経歴

ムタリカは、1934年にマラウイ南部のチョロで小学校長の息子として生まれました。当初の名前はブライトソン・ウェブスター・ライソン・トム（Brightson Webster Ryson Thom）でしたが、1960年代に姓をムタリカに、名をビングー（Bingu）に変更しました。さらに後年、「wa」を名に加えています。

インドのデリー大学で経済学の修士号を取得後、アメリカのパシフィック・ウエスタン大学で開発経済学の博士号を取得しました。その後、マラウイ政府やザンビア政府で勤務し、1978年からは国連職員として活動しました。1991年には、東部・南部アフリカ共同市場（COMESA）の初代事務局長に就任しています。

ムタリカが国連で働くことを決めた背景には、当時のマラウイのバンダ独裁政権への反対がありました。バンダ政権が倒れた後、ムタリカは統一民主戦線（UDF）の創設メンバーとなり、1994年の選挙でUDFは勝利を収めました。

大統領への道

当初、ムタリカはUDFの党首であり大統領であったバキリ・ムルジを支持していましたが、ムルジの経済政策に異を唱え、UDFを離党しました。1997年には統一党（UP）を立ち上げましたが、ムルジ政権への反対はうまくいかず、1999年の大統領選挙では1％未満の得票率に終わりました。

その後、マラウイ準備銀行副総裁の座を打診され、UPを解散してUDFに復帰。2002年には経済計画・開発大臣に就任し、ムルジ大統領から後継者として指名されました。2004年5月の大統領選挙で36％の得票を得て当選し、大統領に就任しました。

大統領としての業績と課題

大統領就任後、ムタリカは反汚職運動を推進しましたが、UDF党首のムルジと対立。この対立は、ムタリカ政権初期の大きな特徴となりました。また、この両者の争いが国の統治を妨げているとの批判もありました。

2005年2月、ムタリカは反汚職の立場への党の理解が得られないとして、再びUDFを離党し、自ら民主進歩党（DPP）を結成しました。2005年4月には、ムルジがムタリカを後継者に選んだことについて国民に謝罪するという出来事もありました。

ムタリカ政権下では、閣僚の更迭や副大統領の逮捕など、政情不安な出来事も発生しました。また、大統領公邸に悪霊が出るという報道がなされ、一時話題となりました。

しかし、ムタリカは経済政策においては一定の成果を上げ、特に農業分野での改革を推進し、マラウイの経済成長に貢献しました。2009年の大統領選挙では再選を果たし、2期目を務めることとなりました。

2010年には、アフリカ連合の議長に就任し、1年間の任期を務めました。

死去と評価

晩年は強権的な政権運営が目立つようになり、国民からの不満も高まりました。2012年4月5日、心臓発作のため78歳で死去しました。

ビング・ワ・ムタリカは、マラウイの経済発展に貢献した一方で、強権的な政治手法や汚職疑惑など、賛否両論のある人物でした。しかし、マラウイの政治・経済に大きな影響を与えたことは間違いありません。

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