グスコーブドリの伝記

『グスコーブドリの伝記』

概要

『グスコーブドリの伝記』は、大正後期から昭和初期にかけて活動した童話作家宮沢賢治によって書かれた作品であり、1932年に雑誌『児童文学』にて発表されました。本作は賢治の代表作の一つで、生前に発表された数少ない童話の中でも重要な位置を占めています。

成立と経緯

本作は、1922年頃に執筆されたとされる前身作品『ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記』が基になっています。この作品では、主人公が苦難を乗り越えて成長する姿が描かれています。賢治はこのモチーフを元に、約10年かけて作品を練り直し、1931年には『グスコンブドリの伝記』という下書きが完成しました。これを経て、最終的に『グスコーブドリの伝記』の形が整えられます。賢治は、詩人・佐藤一英が編集する雑誌に本作を発表し、数篇の原稿が現存していますが、作品は当初の構想が完了する前に清書に入った様子が伺えます。

あらすじ

グスコーブドリはイーハトーブの美しい森で樵の息子として生まれましたが、冷害による飢饉で両親を失い、妹とも生き別れてしまいます。彼は工場で働き始めますが、火山噴火によって閉鎖され、困難な日々を送ります。その後、農業に関心を持ち、クーボー大博士との出会いが彼の人生を大きく変えました。博士に学びを受け、技師として成長したブドリは、再び妹とも再会を果たしました。しかし、27歳のとき、イーハトーブは再度の冷害に見舞われ、ブドリは火山を人工的に噴火させる策を提案します。彼はその計画の実行役として、自らの命を犠牲にする決意を固めます。火山噴火によってイーハトーブを救い出すブドリの姿は、深い感動を呼び起こします。

解説

本作には、宮沢賢治の実体験が大いに反映されており、「ありうべかりし自伝」とも称されています。物語の核心には、自己犠牲や環境への配慮が示されています。特に、火山噴火を通じた温暖化の描写は、21世紀においても地球環境問題の象徴的な表現として引き合いに出されることがあります。また、本作の挿絵は、後に著名な版画家となる棟方志功によって描かれたものです。

登場人物

• - グスコーブドリ：本作の主人公、自己犠牲によってイーハトーブを救う。
• - ネリ：ブドリの妹、早逝した家族に代わって新たな生活を始める。
• - クーボー大博士：ブドリの師匠、彼の成長を助ける。
• - ペンネン老技師：火山局の老技師、ブドリの良き理解者。

映画化

本作は1994年と2012年にアニメ映画としても制作され、特に1994年版は原作に忠実なストーリーで多くの観客を魅了しました。原作のメッセージは、今なお多くの人々の胸に響き続けています。賢治の作品が持つ普遍的なテーマは、環境問題や人々のつながりについて新たな視点を与えてくれます。

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