グッド・バイ (小説)

『グッド・バイ』

概要

『グッド・バイ』は、著名な作家太宰治が手がけた小説であり、彼の絶筆となった作品です。この小説は、彼が『人間失格』を執筆する前の1948年に企画され始めました。当時、朝日新聞の学芸部長である末常卓郎が三鷹にいる太宰を訪れ、連載小説の執筆を依頼しました。しかし『グッド・バイ』は、この依頼を受ける前から彼の心の中で温められていたアイデアであったとされています。

末常はこの作品について語る中で、太宰が描こうとしていたキャラクターは逆ドン・ファンであり、魅力的な男が複数の女性との関係を次々に終え、「グッド・バイ」と告げていく様子を描写しています。やがて、最終的には自分の妻に対しても「グッド・バイ」と告げられ、悲劇的な結末を迎えることになります。

太宰はその後、3月7日に『人間失格』の執筆のために熱海に向かい、執筆場所を次々と移しながらこの作品に取り組みました。5月には第10回までの原稿を朝日新聞に送付。しかし、彼はこの世を去る直前、残された原稿は第11回から第13回までであったため、未完の作品としているのです。

あらすじ

作品の中心となる人物は、雑誌「オベリスク」の編集長、田島周二です。田島は先妻を肺炎で喪った後、友人の家で新たな妻と出会い、結婚します。終戦後、妻と先妻の間に生まれた女児を妻の実家に預け、東京で一人暮らしを始めました。しかし、実は彼の編集者としての仕事は世間の目にさらされる表向きのもので、実際には闇商売を手伝い、愛人を多く持つという噂も立っています。

年月が経つにつれ、34歳の田島は心境の変化を迎え、シンプルな生活を志向し始めます。彼は田舎から家族を呼び寄せ、闇商売をやめて雑誌の編集に集中しようと決意しました。しかし、別れた女性たちとの関係を円満に終わらせる必要があり、途方に暮れる彼に同業の文士がアドバイスを送りました。彼はこの助言を受け、見知らぬ「美人」を見つけて連れ歩くことで、上手く女性たちとの関係を断とうと試みます。

このようにして、田島と彼の愛人たちとの間で繰り広げられる騒動が始まります。

映像化

『グッド・バイ』は、いくつかの映画やテレビドラマとしても映像化されています。初めての映像化は1949年の映画で、島耕二が監督を務め、高峰秀子や森雅之が出演しました。その後も、2020年や2022年に公開された映画は、太宰の作品を新たに解釈したものです。また、1960年や2010年にもテレビドラマとして放送されるなど、様々な形でこの作品は受け継がれています。

漫画と舞台

さらに、2016年から2017年にかけては漫画も制作され、複数の舞台公演が行われました。これらの作品は、太宰が持つ文学的要素を新たな視点で表現しており、彼の作品が今もなお多くの人々に影響を与えていることを示しています。

『グッド・バイ』は、ただの物語ではなく、太宰治自身の思いが詰まった作品であり、彼の人生観や人間関係への深い洞察が感じられる一作と言えるでしょう。

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