グラディス・ツェンダー

グラディス・ツェンダー

グラディス・ロサ・ツェンダー・デ・マイヤー（Gladys Rosa Zender de Meier）は、ペルー出身の元モデルであり、1957年に開催された第6回ミス・ユニバース世界大会の優勝者として歴史に名を刻んだ人物です。彼女の戴冠は、ペルー代表として、またラテンアメリカおよび南アメリカ諸国全体としても史上初となる快挙でした。さらに、南半球出身者としても初のミス・ユニバースであり、有色人種初の優勝者であるという見方も存在します。

生い立ちと背景

1939年10月19日、ペルーのウカヤリ県コンタマナに生まれました。出生時の名前はグラディス・ロサ・ツェンダー・ウルビナです。父親はスイス人の建築家エドゥアルド・ツェンダー・ホーニグマン、母親はペルー人のロサ・ウルビナ・ディ・ネグロでした。彼女はドイツ、イタリア、スペインといったヨーロッパの血筋も引いています。幼少期を経て、リマのサン・イシドロ地区にある女子校、サンタ・ウルスラで教育を受けました。

モデルから世界の舞台へ

グラディス・ツェンダーがモデルの世界へ入るきっかけは、1957年の夏に訪れました。当時、ファッションデザイナーのレオネルが「リマで最も美しい少女」をモデルに探しており、彼女を起用しました。この時に撮影された写真がミス・ペルーの主催者の目に留まり、彼女はミス・コンテストへの参加を勧められます。見事ミス・ペルーに選ばれた後、アメリカ合衆国カリフォルニア州ロングビーチで開催されるミス・ユニバース世界大会への出場権を獲得しました。

ミス・ユニバース優勝と年齢論争

1957年7月19日、グラディス・ツェンダーは世界の強豪が集まるミス・ユニバース決勝に臨み、見事にグランプリを獲得しました。前年のミス・ユニバースであるキャロル・モリスから祝福を受け、栄光のティアラを頭上に載せました。しかし、この優勝決定後に一つの問題が浮上しました。決勝当日、彼女は17歳9か月であり、大会規定が定める18歳に3か月足りていなかったのです。主催者がこの事実に気づいたのは、決勝の翌日だったといいます。タイトルの剥奪も議論されましたが、最終的には、彼女がミスとしての任期期間中に18歳に達すること、そしてペルー国内では公的に、年齢の端数が6か月以上であれば次の年齢に切り上げることが認められているという理由から、彼女のタイトルと王冠はそのまま維持されることとなりました。この時の様子について、日本代表として大会に参加していた大谷享子は、年齢問題が騒がれる中でも堂々としていたグラディス・ツェンダーの姿や、自身の体格との違いに触れ、外国女性と日本女性の差を痛感したことを回顧しています。

優勝後の影響と国民的ヒロインとして

ミス・ユニバース優勝後、グラディス・ツェンダーはペルー国内で絶大な人気を誇る国民的ヒロインとなりました。ペルーの著名なニュースマガジン『カレタス』は、彼女を表紙に起用しましたが、これは同誌史上初のカラー表紙となりました。また、彼女の栄光を称える楽曲も数多く生まれました。作曲家アリーシア・マギーニャは「グラディス・ツェンダー専用ポルカ（最も美しい）」を、ニコラス・ウェツェルは「グラディス・ツェンダー専用ワルツ（ペルー一国分の価値）」を作曲し、これらはペルーの人気ユニット、ロス・トロベーロス・クリオージョスによって演奏・レコーディングされ、国民に広く歌い継がれました。

私生活

1958年には、スペインの訓練船フアン・セバスティアン・エルカーノでの晩餐会において、当時王子であり後にスペイン国王となるフアン・カルロス1世とエスコート役として同行したことが伝えられています。1964年にはパーティーで、経済学者で政治家のアントニオ・マイヤーと出会い、交際を開始。出会いからわずか2か月後にプロポーズを受け、翌1965年に結婚しました。夫アントニオ・マイヤーは後にリマ市長などを務めた人物です。結婚後、グラディス・ツェンダーは公の場から退き、家庭に専念しました。アントニオとの間には4人の子供を授かり、10人の孫に恵まれています。彼らの子供のうち、クリスティアン・マイヤーは現在、ペルーだけでなくラテンアメリカ全体で著名な歌手として活躍しています。

現在の活動

2003年時点の情報によれば、グラディス・ツェンダーはジュエリーや陶器の制作に励み、また熱心に絵を描くなど、創造的な活動を通して日々を忙しく過ごしているとされています。ミス・ユニバースとしての輝かしい時代を経てなお、多才な活動を続けている様子がうかがえます。

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