グラファイト

グラファイト（石墨・黒鉛）

グラファイトは、元素鉱物であり、主成分が炭素で形成されています。六方晶系の結晶構造を持ち、その外観は亀の甲羅のような層状になっています。この層構造では、各層内の炭素原子が強固な共有結合（sp2結合）で結ばれていますが、層間には弱いファンデルワールス力によって結合されているため、簡単に剥がれる特性があります。これにより、原子一個分の厚さからなる単一層になったものは「グラフェン」と呼ばれ、金属と半導体の両方の性質を示します。

特性と種類

グラファイトは、天然と人造の2つに大別され、天然素材は主に中国、スリランカ、メキシコ、カナダ、北朝鮮、マダガスカル、アメリカなどで採掘されます。一方、人造グラファイトはコークスにタールやピッチを加えて処理することで作られます。日本では、かつて富山県の千野谷黒鉛鉱山が活発に稼働していました。

グラファイトには、「石墨」という別名があり、鉛筆やシャープペンシルの芯として広く知られています。古くは、鉛を含むと考えられていたため、ラテン語のplumbumに由来する「plumbago」という名が使われました。しかし、現在ではグラファイトは鉛を含まないことが確認されています。

構造と同素体

グラファイトにはいくつかの同素体が存在しており、ダイヤモンドやカーボンナノチューブ、フラーレンなどがあげられます。常温・常圧下では、ダイヤモンドよりも安定な状態として存在しますが、両者の変換には大きなエネルギー差があるため、通常の状態ではグラファイトからダイヤモンドへの転移は起こりません。

用途

グラファイトは、その優れた特性から多くの用途に利用されています。耐熱性、導電性、自己潤滑性、熱伝導性に優れているため、様々な産業で重宝されています。特に16世紀のイギリスでは、鉛筆の原料として採掘され、また砲弾の鋳型としても使用されました。さらに、耐火物質としての役割も果たし、様々な製品に用いられています。

工業分野においては、黒鉛が潤滑剤として用いられることが多く、室内向けのキーシリンダーや電子機器のメンテナンスに使われることがあります。また、鉄への添加物としても機能し、鋳鉄における炭素はグラファイトの形で現れ、その形状は鋳鉄の特性に大きな影響を与えます。

また、リチウムイオン電池の負極材としても広く利用されており、近年は電気自動車の製造においても重要な役割を担っています。多くの特性を活かした様々な製品が市場に出ており、その使用量は今後も増加していくことでしょう。

まとめ

グラファイトは、炭素から成る多機能な鉱物であり、耐熱性や導電性を活かして多くの分野での利用が進んでいます。その特異な層状構造は、さまざまな応用において貴重な特性を発揮し続けています。グラファイトの重要性は古くから知られ、今後も新たな技術開発に寄与することでしょう。

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