グラフトン公爵内閣

グラフトン公爵内閣：短命に終わった18世紀イギリス政権

1768年10月から1770年1月まで、イギリスを治めたグラフトン公爵内閣は、その短い在任期間と、後に続くノース内閣へと繋がる重要な転換期としてイギリスの歴史に刻まれています。この内閣は、前任のチャタム伯爵内閣が徐々に崩壊していく中で誕生しました。

チャタム伯爵は名目上の首相でしたが、病気のため長期間政務を執ることができず、実質的な内閣運営はグラフトン公爵が担っていました。グラフトン公爵は議会の多数派維持を目指し、ベッドフォード派と呼ばれる政治勢力からの協力を得ようと、ゴア伯爵、ウェイマス子爵、ヒルズバラ伯爵らを閣僚に迎え入れました。しかし、この決断が後に内閣の崩壊を招く大きな要因となります。

グラフトン公爵やチャタム伯爵、そして多くの旧閣僚は、アメリカ植民地に対して融和的な政策を支持していました。一方、ベッドフォード派はより強硬な姿勢をとり、内閣の方針はグラフトン公爵の意図とは裏腹に、ベッドフォード派の影響を強く受けるようになりました。

この対立は、南部担当国務大臣であったシェルバーン伯爵の解任要求という形で表面化します。ベッドフォード派はシェルバーン伯爵の更迭を強く主張し、これを受け、チャタム伯爵はついに王璽尚書を辞任、内閣から離脱しました。これにより、グラフトン公爵は名実ともに首相の座に就きましたが、閣内でのベッドフォード派の影響力は依然として強大でした。

グラフトン公爵内閣は外交政策においても大きな批判を受けました。特に、コルシカ危機における対応は大きな問題となりました。イギリスの同盟国であったコルシカ共和国がフランスに併合されるのを阻止できなかったことは、内閣の外交能力を問う大きな批判を招きました。

この外交政策の失敗に加え、匿名の筆者「ジュニアス」による辛辣な批判記事が新聞に掲載され、内閣への批判はさらに高まりました。こうした批判の矢面に立たされ、1770年1月、グラフトン公爵、大法官カムデン男爵、軍需総監グランビー侯爵が辞任し、グラフトン公爵内閣は崩壊しました。

後任の首相には財務大臣だったノース卿が就任し、ノース内閣が誕生します。ノース内閣は、1782年まで続く長期政権となり、アメリカ独立戦争という大きな歴史的転換期を迎えることになります。グラフトン公爵内閣の短命さは、その後のイギリス政治、ひいては世界史に大きな影響を与えたと言えるでしょう。内閣改造においては、1768年10月にはシェルバーン伯爵が罷免され、ウェイマス子爵が南部担当国務大臣に、ロッチフォード伯爵が北部担当国務大臣に就任しました。さらに1770年1月には、大法官カムデン男爵が罷免され、チャールズ・ヨークが後任に就きましたが、ヨークは同月20日に死去したため、大法官職は一時的に委員会制となりました。

グラフトン公爵内閣の失敗は、党派間の対立や外交政策の誤算、そして国民からの強い批判が複雑に絡み合った結果と言えるでしょう。この内閣の短い歴史は、18世紀イギリス政治の不安定さと、その後のアメリカ独立戦争への道を示唆する重要な出来事として、今日でも研究されています。

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