グラント夫妻

ピーター・レイモンド・グラント（Peter Raymond Grant、1936年10月26日 - ）とバーバラ・ローズマリー・グラント（Barbara Rosemary Grant、1936年10月8日 - ）夫妻は、進化生物学の分野で世界的に著名なイギリス人研究者です。特に、ガラパゴス諸島の大ダフネ島におけるダーウィンフィンチ類の長期にわたる研究は、進化のメカニズムを解明する上で重要な貢献をしています。プリンストン大学に所属し、共に進化生物学者として活動しています。

1973年以来、グラント夫妻は共同研究者や学生と共に、毎年6ヶ月間をダフネ島で過ごしています。彼らは、捕獲したフィンチにタグを付け、血液サンプルを採取した後、再び自然に返すという方法で、個体群の動態を詳細に調査しています。この継続的な調査を通じて、フィンチの嘴や体のサイズが食糧の変化にどのように反応し、それが自然選択を通じて進化を引き起こすのかを明らかにしました。

また、彼らは自然の個体群において、どのように新種が形成され、遺伝的多様性が維持されるのかについても重要な洞察を与えました。これらの発見は、個体群生物学、進化生物学、生態学といった分野に大きな影響を与えています。2005年に個体群生物学分野での功績が認められ、バルザン賞を受賞した際、国際バルザン賞財団は彼らの研究を「ガラパゴスフィンチで起きている進化を長期にわたる特筆すべき研究で示した」と評価しました。

彼らの研究は、科学ジャーナリストのジョナサン・ワイナーによって1994年に『フィンチの嘴』という書籍として刊行され、1995年にはピューリッツァー賞ノンフィクション部門を受賞しました。この書籍は、グラント夫妻の研究成果を広く一般に紹介し、進化の概念をより身近なものにしました。邦訳版も2001年に出版され、多くの読者に感銘を与えました。

グラント夫妻は、その長年の研究活動を通じて数々の栄誉を受けています。1987年には、夫のピーターが王立協会会員に選出され、2007年には妻のローズマリーも同様に選出されています。2002年には、王立協会からダーウィンメダルが二人に対して贈られ、2008年にはロンドン・リンネ学会からダーウィン＝ウォレス・メダルが贈られました。また、2009年には「環境変化に応じた自然淘汰による急速な進化の実証」の功績により、京都賞基礎科学部門を受賞しました。さらに、2017年には王立協会からロイヤル・メダルが贈られるなど、進化生物学への貢献が広く認められています。

彼らの研究は、進化が単なる理論ではなく、自然界で実際に観察できる現象であることを示しています。ガラパゴスフィンチという具体例を通じて、自然選択による進化のプロセスを詳細に明らかにしたグラント夫妻の功績は、今後も進化生物学の研究において重要な基礎となるでしょう。

受賞歴

1987年：ピーター・グラントが王立協会会員に選出
2002年：王立協会からダーウィンメダルを夫妻に授与
2005年：バルザン賞を夫妻に授与
2007年：ローズマリー・グラントが王立協会会員に選出
2008年：ロンドン・リンネ学会からダーウィン＝ウォレス・メダルを夫妻に授与
2009年：京都賞基礎科学部門を夫妻が受賞
2017年：王立協会からロイヤル・メダルを夫妻に授与

外部リンク

ピーター・グラント公式サイト
ローズマリー・グラント公式サイト
Pulitzer Prize: 1995 General Non-Fiction
UCTV: Evolution in Action: Darwin's Finches of the Galápagos Islands - Peter R. Grant & Rosemary Grant
PBS: Evolution Library - Finch Beak Data Sheet

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