バルザン賞

バルザン賞：知の探求と人類への貢献を称える国際的な栄誉

バルザン賞は、イタリアとスイスに拠点を置くバルザン財団によって運営される、世界的に権威のある学術賞です。自然科学、人文科学の分野で傑出した業績を挙げた研究者や、平和と人類愛に貢献した人物・団体に対し、毎年授与されています。

バルザン賞の起源と特徴

バルザン賞は、イタリアの著名な新聞「コリエーレ・デラ・セラ」のオーナー一族であったエウジェニオ・バルザンの遺産を、娘のアンジェラ・バルザンが寄付した基金を基に創設されました。ファシズムを逃れてスイスに亡命したエウジェニオの遺志を継ぎ、アンジェラは学術研究と人道活動を支援するためにこの賞を設立しました。

この賞の大きな特徴は、授賞分野の幅広さにあります。自然科学分野では、数学、物理学、化学、生物学、医学などが対象となり、人文科学分野では、歴史学、哲学、文学、社会学などが含まれます。さらに、3年ごとに「人々の間の平和と兄弟愛」を促進する人道的取り組みに対し、特別賞が授与されます。

バルザン賞は、必ずしも一般に広く知られている賞ではありませんが、その権威と賞金額の大きさから、「スイス・イタリアのノーベル賞」とも呼ばれています。受賞者には75万スイスフラン（約1億2000万円）が授与され、その半額は研究プロジェクトの資金として使用することが義務付けられています。

授賞式は、ベルンとローマにある、イタリアの最高学術団体アッカデーミア・デイ・リンチェイで、交互に開催されます。

主な受賞者たち

バルザン賞は、これまでに数多くの著名な研究者や人道活動家を表彰してきました。

1961年：ノーベル財団
1962年：ヨハネ23世（人道活動）、アンドレイ・コルモゴロフ（数学）、パウル・ヒンデミット（音楽）、カール・フォン・フリッシュ（動物行動学）、サミュエル・モリソン（歴史学）
1978年：マザー・テレサ（人道活動）
1979年：ジャン・ピアジェ（発達心理学）、ジュゼッペ・トゥッチ（東洋学）
* 1980年：エンリコ・ボンビエリ（数学）、ハッサン・ファトヒー（都市計画建築）、ホルヘ・ルイス・ボルヘス（文学）

2000年代以降も、ミシェル・マイヨール（天文学）、山中伸弥（医学）、マニュエル・カステル（社会学）、アラン・アスペ（物理学）、ジェームズ・P・アリソン（医学）、ロバート・ランガー（生体工学）、マーサ・ヌスバウム（哲学者）など、各分野の第一人者が受賞しています。

日本人では、2007年に飯島澄男（化学・物理学）、2010年に山中伸弥（医学）が受賞しています。

バルザン賞が示すもの

バルザン賞は、科学、文化、人道における卓越性を称えるとともに、人類の進歩に貢献する研究と活動を支援することを目的としています。その幅広い分野と国際的な性質は、知識の探求と人類への貢献が、国境や文化を超えて共有されるべき普遍的な価値であることを示しています。

バルザン賞は、過去の偉大な業績を讃えるだけでなく、未来の世代の研究者や活動家を鼓舞し、人類の知性と創造性を刺激する存在として、これからも輝き続けるでしょう。

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