グランドスラム・パリ2019

グランドスラム・パリ2019：疑惑の試合とイラン・イスラエル問題

2019年2月9日から10日の2日間、フランス・パリのアコーオテル・アレナで柔道の国際大会「グランドスラム・パリ2019」が開催されました。この大会では、数々の熱戦が繰り広げられましたが、特に男子81kg級におけるある試合が大きな波紋を呼びました。

81kg級における疑惑の試合

問題となったのは、81kg級準々決勝での出来事です。世界チャンピオンであるイランのサイード・モラエイ選手が、世界ランキング209位のカザフスタンのラスラン・ムサエフ選手に、試合開始早々に一本背負投で敗れるという波乱がありました。しかし、この敗戦には、続く準決勝でイスラエルのサギ・ムキ選手との対戦を避けるための意図的なものだという疑惑が浮上しました。

モラエイ選手はその後、3位決定戦で勝利したものの、右膝の負傷を訴え、表彰式には姿を現しませんでした。この一連の事態に対し、国際柔道連盟（IJF）のマリウス・ビゼール会長は、慎重に調査を進める意向を示唆しました。

背景には、イランとイスラエルの政治的な対立があります。イランはイスラエルを国家として承認しておらず、スポーツの世界でも両国の選手が対戦することを避ける傾向にありました。モラエイ選手の場合、もしムキ選手と対戦した場合、自国からの圧力や家族への影響を考慮すると、対戦を拒否せざるを得ない状況だったとも考えられます。

実際、モラエイ選手は過去にも、2018年のグランドスラム・アブダビで、ムキ選手との対戦を避けるために棄権したことがありました。この時はIJFから虚偽申告とは判断されませんでした。

イラン柔道界の苦悩

IJFは、イランに対し、オリンピック憲章と差別を容認しないオリンピック精神を尊重するよう求めました。その結果、イランオリンピック委員会とイラン柔道連盟から、その旨の回答が寄せられ、長年続いてきたイラン選手によるイスラエル選手への対戦拒否に終止符が打たれるかに見えました。

しかし、イランの一部メディアは、この方針転換に懐疑的な見方を示しており、イランの政策としてイスラエルの選手との対戦を避ける方針は変わらないと主張しています。イランオリンピック委員会会長も、IJF会長に対し、シオニスト政権下の選手とは対戦しないという従来の方針を通知したとされています。

地元フランスの苦戦

今大会では、地元フランス男子が7階級に計27名も出場したにも関わらず、メダルを1つも獲得できずに終わりました。これは、大会が始まった1971年以来、初の出来事でした(女子は金2つを含めて5つのメダルを獲得)。

グランドスラム・パリ2019は、スポーツの祭典であると同時に、政治的な問題が複雑に絡み合った大会となりました。特に、イランとイスラエルの対立は、柔道界にも大きな影響を与えており、今後の動向が注目されます。

脚注

PARIS GRAND SLAM JUDO 2019
GRAND SLAM PARIS

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