グランド・シャルトルーズ

グランド・シャルトルーズ修道院：静寂と歴史が織りなす聖地

フランス南東部、イゼール県サン＝ピエール＝ド＝シャルトルーズに位置するグランド・シャルトルーズ修道院は、カルトジオ会（カルメル会の一派）の母修道院として知られています。シャルトルーズ山地の雄大な自然に抱かれたこの修道院は、その厳格な修道生活と、修道院で生産されるシャルトリューズ酒で世界的に有名です。

建立とカルトジオ会の起源

1084年、グルノーブル司教であった聖シャトーヌフのユーグが、隠者であった聖ケルンのブルーノとその弟子たちに修道院の建物を提供しました。この地でブルーノはカルトジオ会を創設し、厳しい禁欲生活を送りました。当初はグルノーブル司教座に属する建物でしたが、ブルーノたちによってカルトジオ会の精神が根付き、独自の修道院として発展していきました。

厳格な修道生活とシャルトリューズ酒

グランド・シャルトルーズ修道院では、古くから厳しい規律のもと、修道士たちは個人で祈りと労働に励む生活を送ってきました。中世においても、修道院は限られた人数しか受け入れず、個室での生活が基本でした。食事すらも食堂ではなく、それぞれの部屋で行われていたと言われています。

この静寂な生活を支えてきたのが、修道院で生産されるシャルトリューズ酒です。19世紀から20世紀半ばにかけて、シャルトリューズ酒の販売は修道院の重要な収入源となり、新たな修道院の設立や慈善活動、宗教プロジェクトの援助に役立てられました。現在でも、その収益はカルトジオ会の活動に大きく貢献しています。

閉鎖と復活劇

1903年、フランス政府によって修道院は閉鎖され、修道士たちはイタリアのファルネタ修道院へと移されました。しかし、第二次世界大戦の勃発が、修道士たちの運命を大きく変えます。イタリアが参戦する可能性が高まった1940年、フランス領事が修道士たちにフランスへの帰国を促し、ドイツ軍の侵攻前に修道士たちはグランド・シャルトルーズへ戻ることができました。1941年にはヴィシー政府によってカルトジオ会が正式に承認され、修道院は返還されました。

静寂への誘い：映画『大いなる沈黙へ』

グランド・シャルトルーズ修道院の静寂な生活と修道士たちの信仰を描いたドキュメンタリー映画『大いなる沈黙へ』（監督：フィリップ・グレーニング）は、2005年の公開後、世界中の映画祭で高い評価を受けました。日本でも2014年に公開され、多くの人々に感動を与えました。この映画は、修道院の神秘的な雰囲気と修道士たちの精神世界を巧みに表現し、観る者に深い感銘を与えています。

現在

現在も、グランド・シャルトルーズ修道院はカルトジオ会の母修道院として、厳格な戒律を守りながら静かに活動を続けています。外部からの訪問は制限されていますが、近隣にはカルトジオ会の博物館があり、修道士の生活空間を見学することができます。その歴史と伝統、そして静寂に包まれた神秘的な空間は、多くの人々の心を惹きつけ続けています。 修道院の周辺は、自然豊かな山岳地帯が広がり、ハイキングや登山を楽しむ観光客にも人気があります。しかし、修道院への立ち入りは厳しく制限されているため、静寂を守りながら、この聖地を敬遠する姿勢が求められています。

もう一度検索