グラン・サン・ベルナール峠

グラン・サン・ベルナール峠：歴史と文化が交差するアルプスの要衝

グラン・サン・ベルナール峠は、スイスとイタリアの国境に位置するアルプス山脈の峠であり、古来より重要な交通路として利用されてきました。その歴史は古く、青銅器時代から人が行き交い、ローマ帝国時代には街道が整備され、神殿が建立されました。本記事では、この峠の歴史、地理、文化、そしてセント・バーナード犬との深い関わりについて詳しく解説します。

名称の由来と位置

グラン・サン・ベルナール峠は、旅行者の救難に尽力した聖ベルナールにちなんで名付けられました。モンブランの東約15kmに位置し、標高は2,469メートル。スイスのマルティニーとイタリアのアオスタを結ぶ街道が通っています。

歴史：ハンニバルからナポレオンまで

紀元前218年には、ハンニバルが戦象を連れてアルプスを越えたルートの一つとして候補に挙がっています。中世には、ローマ教皇やカール大帝もこの峠を越えました。18世紀までは、年間2万人もの商人や巡礼者が行き交いましたが、山賊や悪天候、雪崩などによる遭難も多発しました。

1050年、ベルナール・ド・マントンは、遭難者救助のためホスピスを建設。宿泊と食事を提供し、人々の命を救いました。彼の功績により、峠は「グラン・サン・ベルナール」と名付けられ、救助活動に尽力した犬たちは「セント・バーナード」と呼ばれるようになりました。

1800年5月には、ナポレオン・ボナパルトが4万の兵を率いて峠を越え、イタリア遠征に向かいました。この際、彼は峠のホスピスに借用証を置いて物資を調達しましたが、残額が清算されたのは1984年のことでした。

セント・バーナード：救助犬の英雄

セント・バーナードは、グラン・サン・ベルナール峠のホスピスで育成された救助犬です。樽に食料や気付け薬を詰め、遭難者へ届けました。その中でも、生涯で40人もの命を救ったバリーは、特に有名な救助犬として知られています。

グラン・サン・ベルナールトンネル

1964年には、峠の中腹を貫くグラン・サン・ベルナールトンネルが開通。これにより、峠道の交通量は減少し、観光地としての性格を強めました。トンネルは全長6,596メートルで、アルプスを貫く重要な交通路として機能しています。

近年のグラン・サン・ベルナール峠

現在、峠道は夏季に自動車で通行可能ですが、冬季は閉鎖されます。峠には歴史あるホスピスが残り、登山者向けの宿泊・救護施設として利用されています。また、自転車ロードレースのコースとしても利用され、ツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリアなどのグランツールでも、その名が知られています。

グラン・サン・ベルナール峠は、その歴史、地理、そして文化的な背景から、アルプスを代表する峠の一つとして、多くの人々に愛されています。

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