グラン・パ・クラシック

グラン・パ・クラシック

『グラン・パ・クラシック』（Grand Pas Classique）は、1949年にパリで初演されたバレエ作品です。ダニエル＝フランソワ＝エスプリ・オベール作曲のオペラ・バレエ『マルコ・スパダ』（Marco Spada）から曲を選び、ロシア出身の振付家ヴィクトル・グゾフスキーがグラン・パ・ド・ドゥとして新たに振り付けました。その華麗な構成と技巧的な見せ場から、バレエコンサートなどで頻繁に上演されています。

作品の成立

『グラン・パ・クラシック』の音楽の元となった『マルコ・スパダ』は、正式名称を『マルコ・スパダ、あるいは盗賊の娘』（Marco Spada ou La Fille du Bandit）といい、1852年にオベールが作曲した全3幕のオペラ・コミック作品です。1857年にオペラ・バレエとして改作され、ジョゼフ・マジリエの振付によりパリ・オペラ座で上演されました。物語は、表向きは貴族でありながら実は盗賊であるマルコ・スパダ、その娘アンジェラ、そしてアンジェラの恋人であるフェデリッチ公爵を巡る人間模様を描いています。

グゾフスキーによる新たな振付

『マルコ・スパダ』に注目したのが、ロシア出身の振付家ヴィクトル・グゾフスキーでした。彼はベルリン国立歌劇場やマルコワ・ドーリンバレエ団などでバレエ・マスターを歴任し、1949年当時はパリ・オペラ座バレエ団でバレエ・マスターを務めていました。グゾフスキーは、パリ・オペラ座バレエ団のエトワールであるイヴェット・ショヴィレとヴラジーミル・スクラトフのために、『マルコ・スパダ』から4曲を選んでグラン・パ・ド・ドゥ形式の小品を振り付けました。この作品は『マルコ・スパダ』の物語とは直接的な関連はなく、独立した作品として構成されています。

作品の特徴と評価

オベールの華やかな音楽に乗せて、クラシックバレエの高度な技巧が次々と繰り広げられる『グラン・パ・クラシック』は、優雅さと格調の高さを兼ね備え、観客を魅了しました。特に、初演者であるショヴィレはこの作品を当たり役とし、高い評価を得ました。その後、パリ・オペラ座をはじめ、世界中のスターダンサーたちがレパートリーに取り入れています。グゾフスキーの他の振付作品はあまり上演されなくなっていますが、『グラン・パ・クラシック』は例外的に、新古典主義の傑作としてジョージ・バランシンの『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』などと並び、バレエ・コンサートで頻繁に上演されています。また、バレエ・コンクールの課題曲としてもよく選ばれています。ショヴィレは、シルヴィ・ギエムをはじめとするパリ・オペラ座の後輩ダンサーたちにこの作品を指導しました。

構成

『グラン・パ・クラシック』は、伝統的なグラン・パ・ド・ドゥの形式に則り、以下の4つの部分で構成されています。

1. アダージョ: 男女2人の踊り。管弦楽の華やかな前奏とともに、男女のダンサーが舞台の左右から登場します。数小節ごとにテンポが変化する音楽に乗せて、男女が優雅に踊ります。男性が2回転のトゥール・アン・レールを行う間に、女性がポアントでバランスを保つ場面が3回繰り返されるのが見どころです。
2. ヴァリアシオン1: 男性のソロ。躍動的な音楽に乗せて、トゥール・アン・レールや大きな跳躍、回転技などが披露されます。最後は連続アントルシャからトゥール・アン・レールにつなげて終わります。
3. ヴァリアシオン2: 女性のソロ。リズミカルな音楽に合わせて、ポワント・ワークを駆使した踊りが展開されます。片脚を高々と上げて回転しながら、もう一方の脚はポアントで立つ、というシークエンス（ディアゴナル）が見せ場となります。
4. コーダ: 男女2人の踊り。快活な音楽に合わせて、男性はブリゼ・ヴォレ、女性は連続フェッテを披露し、互いの技巧を競い合うように踊ります。最後は、管弦楽の強奏とともに男女が舞台中央でポーズを決め、幕が下ります。

『グラン・パ・クラシック』は、その華麗な音楽と高度な技巧が融合した、クラシックバレエの魅力を凝縮した作品として、今もなお多くの人々に愛されています。

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