グラーニア

グラーニア（Gráinne）

グラーニアは、ケルト神話、特にアイルランドの神話に登場する魅力的な女性です。彼女は、フィン物語群において重要な役割を果たし、その名は「醜い女」を意味するにも関わらず、物語の中では若く美しい女性として描かれています。

伝承：ディルムッドとの逃避行

グラーニアの物語で最も有名なのは、『ディルムッドとグラーニア』でしょう。物語は、彼女が老齢の英雄フィン・マックールとの婚約を強いられるところから始まります。しかし、若いグラーニアはフィンとの結婚に気が進まず、祝宴で眠り薬を使って宴の参加者を眠らせ、若き戦士ディルムッド・オディナに助けを求めます。彼女はディルムッドに「自分を連れて逃げなければ破滅が訪れる」というゲッシュ（誓約）を与え、彼を逃避行へと誘います。

騎士団長フィンへの忠誠心と花嫁を奪うことへのためらいから、一度はグラーニアの頼みを拒絶したディルムッドでしたが、ゲッシュによって彼女と共に逃げることになります。当然ながら、フィンは激怒し、騎士団に二人を追跡させます。ディルムッドは、武勇と知略、そして養父である妖精王オェングスの助け、さらには彼への友情から手心を加える騎士たちの協力もあり、幾度となくフィンの追跡をかわします。

逃避行の間、ディルムッドはフィンへの忠誠心からグラーニアとの関係を保っていましたが、彼女はそれを不満に思い、彼を挑発します。ついにディルムッドはグラーニアを受け入れ、二人は愛を誓い合います。

和解、そして悲劇

長い年月が過ぎ、フィンはオェングスの仲介もあり、最終的に二人を許します。グラーニアとディルムッドは夫婦として公に認められ、幸せな日々を送ります。しかし、グラーニアはフィンとの関係を修復しようと狩猟宴を催しますが、それは恨みを抱くフィンに復讐の機会を与えることになります。

ある夜、ディルムッドは猟犬の吠える声を聞き、翌朝狩りに出かけます。グラーニアは不安を覚え、彼を止めようとしますが、ディルムッドは聞き入れません。狩りに出かけたディルムッドは、フィンの罠にはまり、魔猪に襲われて瀕死の重傷を負います。癒しの力を持つフィンでしたが、彼はディルムッドを見殺しにし、ディルムッドは息絶えます。

その後

ディルムッドの死後、グラーニアは悲しみに暮れますが、やがてフィンに口説き落とされ、彼の妻として生涯を終えます。しかし、フィンの裏切りを知る騎士たちは、グラーニアとの間に冷たい壁を感じていたと言われています。また、グラーニアは愛する夫を失った悲しみのあまり、後を追うように亡くなったという伝承も残されています。

影響と意義

グラーニアの物語は、若者と年配の権力者の間の三角関係という類型を示しており、これは他のケルト神話やアーサー王物語にも見られるテーマです。この物語は、愛、裏切り、そして運命といった普遍的なテーマを扱い、人々に語り継がれています。

アイルランドのキルババのウォーターフロント記念公園にはジム・コノリー作の「ディルムッド・オディナとグラニア」の石像が置かれています。

もう一度検索