グリコヘモグロビン

グリコヘモグロビン

概要

グリコヘモグロビン、または糖化ヘモグロビンとは、血液中のヘモグロビンが血中のブドウ糖（グルコース）と非酵素的に結合してできる物質の総称です。ヘモグロビン自体がいくつかの成分から構成されるため、グリコヘモグロビンも単一ではなく複数種類があります。その中でも、ヘモグロビンA1c（HbA1c）は、血糖コントロールの指標として臨床検査で最も広く用いられています。

生成と臨床的意義

血糖としてグルコースを利用するヒトなどの血液中には常にグルコースが存在します。このグルコースは反応性が高く、健康な人でも酵素の仲介なしに血中タンパク質と結合します（糖化）。ヘモグロビンも糖化され、グリコヘモグロビンが生成します。この反応は不可逆的であり、時間と共に血液中に蓄積します。生成速度は血糖値に比例するため、血糖値が高いほどグリコヘモグロビンの量は増加します。

この性質から、グリコヘモグロビンは血糖コントロールの状態を評価する有用な指標となります。糖尿病患者、特に血糖コントロールが不十分な場合は値が増加します。逆に、血糖値が低い状態が続く場合は減少します。

グリコヘモグロビンが重要なのは、過去の平均的な血糖レベルを反映する点です。ヘモグロビンを含む赤血球の寿命は約120日であり、赤血球の分解とともにグリコヘモグロビンも分解されます。このため、グリコヘモグロビンの血中濃度は、測定時点から遡った約1〜3ヶ月間の平均的な血糖レベルを示す指標として利用されます。これにより、直前の血糖値では分からない長期的な血糖管理の状態を把握できます。HbA1cはこの長期指標として最も一般的に測定されます。

測定と標準化

グリコヘモグロビンの測定方法によって、得られる値が異なることがあります。これは、測定法ごとに検出する糖化ヘモグロビンの種類や割合が異なるためです。このばらつきを解消するため、測定値の標準化が進められています。異なる測定法間で線形関係が確認されていることから、指定比較法（DCM）を用いてIFCC値やNGSP値といった国際的な基準値に校正されます。現在、臨床現場ではIFCC値とNGSP値が統一評価に広く用いられています。日本の臨床現場もNGSP値に準拠しています。

基準値

HbA1c値は糖尿病の診断基準にも用いられます。世界保健機関（WHO）は、HbA1c値48 mmol/mol（NGSP値6.5%）以上を糖尿病型として推奨しています。治療目標値は患者ごとに異なりますが、この基準値以下を目指すのが一般的です。

グリコヘモグロビン、特にHbA1cの測定は、糖尿病の診断、治療効果判定、合併症リスク評価に不可欠な検査です。

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関連項目：ヘモグロビンA1c

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