グリーゼ486

グリーゼ486

概要

おとめ座の方向、地球から比較的近い位置にある恒星がグリーゼ486です。ウォルフ437という別の名称でも知られています。分類としては赤色矮星にあたり、太陽に比べて小さく、表面温度は約3340ケルビンと低温です。星を構成する元素の比率、特に金属量（水素やヘリウム以外の重元素の量）は太陽とほぼ同じレベルです。

過去には、突発的に明るさが変化する「閃光星」である可能性が疑われた時期もありましたが、2019年に行われた観測では、閃光星の特徴的な活動は明確には確認されませんでした。星の彩層には、約1.6キロガウスという比較的弱いながらも磁場が存在しています。

グリーゼ486は自転速度が遅く、その特徴から非常に古い天体と考えられています。天の川銀河内での動き（運動学）を見ると、銀河系を構成する主要な構造の一つである「古い薄い円盤部」に属している可能性が指摘されています。

また、周囲に他の天体が存在しないかを探す多重度調査が2020年に行われましたが、現時点の情報（2020年時点）では、グリーゼ486に付随する他の星や天体は検出されていません。

惑星系

グリーゼ486星系が特に注目される理由の一つは、その周りを公転する太陽系外惑星の存在です。2021年に「グリーゼ486b」と名付けられた惑星が発見されました。この惑星は、主星であるグリーゼ486から非常に近い軌道を回っています。

グリーゼ486bは、岩石で構成されていると考えられており、その物理的な特徴から、今後の天文学的研究における重要なターゲットとなっています。特に、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡（JWST）のような次世代の大型宇宙望遠鏡による観測に適している点が評価されています。JWSTによる観測が行われれば、惑星の大気成分を詳細に分析する分光観測が可能となり、その組成や性質について多くの情報が得られると期待されています。このような詳細な特性評価が可能な岩石惑星はまだ発見例が少なく、グリーゼ486bは貴重な存在です。

名称の由来

このグリーゼ486星系には、特別な固有名が与えられています。国際天文学連合（IAU）が、持続可能な発展のための国際基礎科学年（IYBSSD2022）の一環として企画した「太陽系外惑星命名キャンペーン2022（NameExoWorlds 2022）」において、グリーゼ486とその惑星は命名対象の20星系の一つに選ばれました。

世界中から一般公募された候補の中から、IAUが最終選考を行い、2023年6月に正式な名称が発表されました。主星のグリーゼ486は「Gar（ガル）」、惑星のグリーゼ486bは「Su（スー）」と命名されました。

これらの名称は、スペインとフランスにまたがるバスク地方の言語、バスク語に由来しています。「Gar」はバスク語で「炎」、「Su」は「火」を意味します。これらの言葉は、危険と守護という対照的な性質を象徴していると同時に、バスク地方で情熱や熱狂を表す際によく使われる慣用句「su eta gar」（火と炎）からもインスピレーションを得て名付けられました。このように、グリーゼ486星系は、科学的な興味深さに加えて、文化的な背景を持つ特別な名前を持つことになりました。

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