グルクロノキシラン

グルクロノキシラン (Glucuronoxylan)

概要

グルクロノキシラン（glucurono xylan）は、広葉樹の細胞壁において、セルロースに次いで二番目に多く含まれる主要なヘミセルロースです。その含有率は、広葉樹の乾燥重量に対しておよそ20%から30%に達します。植物の構造を支える上で重要な役割を担う多糖類であり、広葉樹バイオマスの有効活用を考える上で注目される成分の一つです。化学物質の識別番号であるCAS登録番号は[9014-63-5]が付与されています。

化学構造の詳細

グルクロノキシランの分子は、その複雑な構造に特徴があります。この多糖類の骨格を形成する主鎖は、D-キシロースという単糖単位のみが繰り返し連なることによって構成されています。特に、これらのキシロース単位はβ1-4という特定のグリコシド結合様式で強固に結びついており、比較的直線的なポリマー鎖を形成しています。このキシロースのホモ多糖主鎖が、グルクロノキシランの基本的な枠組みとなります。

主鎖に対して付加される側鎖構造も、グルクロノキシランの重要な特徴です。主鎖を構成するキシロース残基のおよそ10個につき1個の割合で、4-O-メチルグルクロン酸という糖酸単位が側鎖として結合しています。この側鎖は、主鎖のキシロース残基の2位の炭素原子に、α1-2グリコシド結合という別の結合様式で接続しています。4-O-メチルグルクロン酸はカルボキシル基を持つため、分子全体に負の電荷を付与し、これがグルクロノキシランの溶解性や他の成分との相互作用に影響を与えます。側鎖の結合頻度や位置は、グルクロノキシランの物理化学的性質を決定する重要な要素です。

さらに、グルクロノキシランの分子には、アセチル基による化学的な修飾が見られます。これらのアセチル基は、主鎖のキシロース残基の2位または3位のヒドロキシル基にエステル結合として付加しています。一つのグルクロノキシラン分子には、平均して6個から7個のアセチル基が付加していることが報告されています。アセチル基の存在は、分子の親水性を低下させたり、酵素による分解への耐性を変化させたりするなど、その性質に影響を与えます。アセチル基の付加位置が2位と3位にわたることも、構造の多様性を示唆しています。

グルクロノキシラン分子は、完全に直線状ではなく、短い分岐構造を伴います。一つのポリマー分子あたり、通常2つから3つ程度の短い側鎖の分岐が存在すると考えられています。これらの短い分岐は、分子が細胞壁中でどのように配置され、他の構成要素（セルロースミクロフィブリルなど）とどのように相互作用するかに影響を与える可能性があります。

分子のサイズに関しては、その重合度が約200程度であると報告されています。これは、平均的な分子が約200個のキシロース単位から構成されていることを意味します。他の植物多糖類、例えばセルロースと比較すると、比較的低い重合度であり、これがグルクロノキシランの物理的な振る舞いや可溶性、粘度などに影響を与えると考えられます。

溶液中における光学的な性質も調べられており、グルクロノキシランの比旋光度は約-70度から-90度の範囲であることが知られています。この比旋光度の値は、分子が溶液中で特定の立体的な配置（コンフォメーション）をとる傾向があることを示しており、その分子構造を反映した特性の一つです。

これらの構造的特徴、すなわちβ1-4結合キシロース主鎖、α1-2結合4-O-メチルグルクロン酸側鎖、アセチル基修飾、そして短い分岐構造は、グルクロノキシランが広葉樹細胞壁内で果たす機能、例えば細胞壁の強度や柔軟性、水分の保持能力などに深く関わっていると考えられています。広葉樹バイオマスの成分として、化学的および物理的な多様性を持つ重要な多糖類です。

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