グル県

グル県

ウガンダ共和国の北部に位置するグル県（グルけん、Gulu District）は、同国を構成する重要な県の一つです。首都カンパラからは北へおよそ330キロメートル離れた広大な地域を管轄しています。

歴史と地理

グル県の歴史は、1974年にアチョリ県が東西に分割されたことに始まります。この時に誕生したのが「西アチョリ県」であり、その後の1980年、県庁が置かれた都市グルにちなんで現在の「グル県」へと改称されました。県域は一度確定した後も変遷を経ており、特に2006年7月には西部の広範囲が分離され、新たにアムル県が設置されました。

現在のグル県は、地理的には北東をキトゥグム県、東をパデル県、そして南をランゴ地方に属するオヤム県と接しています。また、隣接する県としては、先に述べたアムル県のほか、ランウォ県、オモロ県、ナウォヤ県が挙げられます。歴史的な視点から見ると、アムル県への分割が行われる以前の旧グル県は、南側では白ナイル川を境界としてブニョロ地方のマシンディ県と、西側では西ナイル地方のアルーア県およびネビ県と、北西側ではアジュマニ県と、そして北側では当時スーダン南部であった地域とも広範な境界を有していました。

県内の行政区画としては、オモロ郡とアチュワ郡が設置されています。かつてグル県の一部であったンウォヤ郡およびキラク郡は、アムル県が設置された際に同県へと移管されました。

人口と経済

グル県の人口構成は、2002年の国勢調査時点のデータから把握することができます。この調査によれば、アムル県への分割が行われる前の旧グル県の総人口は479,496人でした。分割後の現在のグル県の人口は290,624人となっています。県民の大多数は農業を主な生業としています。

交通の要衝

グル県は、ウガンダ北部における主要な都市の一つであり、地域の交通網において重要な役割を担っています。県庁所在地のグル市からは、国内各地や隣国スーダンへと繋がる主要な幹線道路が放射状に伸びています。具体的には、南方向へはリラ方面、西方向へはアルーア方面、北東方向へはキトゥグム方面、そして北西方向へはスーダンのニムレ方面へとアクセスする主要道路が整備されています。この交通網により、グル県は北部地域の物流や人流の中心地となっています。

社会情勢と歴史的背景

グル県は、文化的な側面でも特筆すべき地域です。著名なアチョリの詩人であるオコト・ビテックや、ウガンダ人民民主軍を率いたアリス・アウマ、さらには悪名高い反政府武装組織である神の抵抗軍（LRA）の指導者ジョゼフ・コニーといった人物たちが、このグル県の出身者です。

しかし、グル県の近代史は、長期にわたる激しい内戦と切り離して語ることはできません。特に1986年以降、ヨウェリ・ムセヴェニ率いるウガンダ政府軍（国民抵抗軍）と、アリス・アウマのウガンダ人民民主軍、そして後にジョゼフ・コニーが率いる神の抵抗軍（LRA）との間で繰り広げられた紛争は、この地域を主要な戦場としました。

この内戦は、グル県の住民生活に壊滅的な影響を与えました。LRAによる攻撃や誘拐、政府軍による住民の保護を名目とした強制移住などにより、県人口の9割以上が故郷の村を離れることを余儀なくされ、町や市場の近辺に設置された避難民キャンプでの過酷な生活を強いられました。

内戦の中でも特に深刻な問題となったのが、LRAによる子どもたちの拉致です。これを恐れた農村部の子どもたちは、夜になると安全な都市部へと移動し、朝になってから再び村に戻るという生活を送るようになりました。彼らは「夜の通勤者」（Night Commuters）と呼ばれ、その悲惨な状況は国際社会の注目を集めました。ユニセフの調査によれば、グル県内で確認された「夜の通勤者」の数は、最大時には22,000人に達したと推定されていますが、内戦の終結や状況の改善に伴い、2006年8月には3,664人まで減少したと報告されています。

その他

関連項目: ウガンダの行政区画
外部リンク: グル県のポータルサイト（ウェブアーカイブ）

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