グレゴリオス・パラマス

グレゴリオス・パラマス（1296年 - 1359年）は、小アジア出身のギリシア人神学者であり、アトス山の修道士、そして後にテッサロニキの大主教を務めた正教会の聖人です。彼は、中世正教神学の主流となった静寂主義（ヘシカズム/イシハズモス）の提唱者であり、その理論家として最も重要な人物の一人です。

生涯と業績

グレゴリオス・パラマスは、静寂主義の中心的な理論家として、正教会の教義を深く掘り下げました。特に、神の恩寵に関する彼の見解は、当時の神学論争の中心となりました。

イタリア出身のギリシア人修道士、カラブリアのバルラアム（1290頃 - 1348年）は、「恩寵は神によって作られた」という説を唱えました。これに対し、グレゴリオスは「被造の恩寵は人間から非被造の神への媒介となりえない」と反論し、恩寵の非被造性を主張しました。

彼の主張の中心は、神の本質と働き（エネルゲイア）の区別に基づいています。グレゴリオスによれば、人は神の本質を直接知ることはできませんが、神の働きを通して神を知ることができるとしました。この考えは、カッパドキア三教父（バシレイオス、グレゴリオス・ナジアンゾス、グレゴリオス・ニュッサ）の神学に深く根ざしています。

また、グレゴリオスは、タボル山でのキリストの変容に注目し、使徒たちが目撃した光を、神の創造されない光であると解釈しました。彼は、この光を体験するためには、確実な霊的指導と、集中した祈りが必要であると説きました。

静寂主義（ヘシカズム）

静寂主義とは、東方正教会における瞑想的な祈りの実践を指します。グレゴリオス・パラマスは、この静寂主義の理論的基礎を築き、その実践を擁護しました。彼の教えは、人が内なる静けさの中で神との直接的な出会いを体験できると信じるものでした。この出会いは、知的な理解だけでなく、心全体を使った霊的な体験を伴うとされました。

著作と影響

グレゴリオス・パラマスの著作は、『フィロカリア』にも収録されており、彼の神学思想は現代においても多くの人々に影響を与え続けています。彼の著作の中には、『聖なるヘシュカスト（静寂主義者）のための弁護』（別名『三部作』）のような主要な作品が含まれています。これらの著作は、正教会の霊性と神学を深く理解するために不可欠です。

正教会では、大斎第2主日をグレゴリオス・パラマスの記憶に充て、彼の貢献を記念しています。日本では、日本ハリストス[[正教会]]で「グレゴリイ・パラマの主日」として知られています。また、11月27日（ユリウス暦11月14日）もグレゴリオス・パラマスの記憶日とされています。

主な著作

『聖なるヘシュカスト（静寂主義者）のための弁護』（別名『三部作』）
『講話集』
『対話篇』

関連事項

ジョン・メイエンドルフ：20世紀の正教会の神学者で、グレゴリオス・パラマスの神学を研究し、普及させた。
* 神化（テオーシス）：正教会の霊的な目標であり、人間が神のようになることを意味する。グレゴリオス・パラマスの教えは、神化の概念を深く理解する上で重要。

まとめ

グレゴリオス・パラマスは、14世紀の東方正教会において、静寂主義の理論を確立し、神の恩寵に関する独自の視点を展開した重要な神学者です。彼の著作と教えは、正教会の神学と霊性に深く根ざしており、現代においてもその影響は大きいと言えるでしょう。

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